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上海最先端レポート

貧富混合居住(上)~日本人が知らない中国事情(54)
上海最先端レポート
2010年8月30日 16:08
劉 剛

 近年、物件価格の急騰に伴い、民衆からの不満の声が高まりつつあります。社会に悪影響を与えることが懸念されたため、今年4月に、価格上昇を抑制しようと、中央政府が不動産業界に対して一連の制限策を実施し始めました。同時に、中低所得層の居住問題を解決するにあたって、「保障房」が全国各地で勢いよく着工されています。

 「保障房」とは、政府からの資金投入で建設されたもので、中低所得層の人々に安く貸し出すか、あるいは特定販売を行なう物件です。そのなかには、主に販売用の「経済適用房」と、賃貸用の「廉賃房」を含んでいます。

上海市内 「保障房」の建設には利益が少ないため、民間デベロッパーが無関心の状態です。一方、経済建設に没頭する地方政府は、資金繰りにも苦しんでいるのが実情です。妥協の結果、一部の「保障房」を民間デベロッパーに頼む形になりました。デベロッパーが「商品住宅」という一般販売用住宅開発プロジェクトに着手する際、前提として同じ区域内で一定比率の「保障房」を建設し、完成した後で政府に移すのです。
 そのため、同じ住宅団地において、「商品住宅」と「保障房」が混在する状態になっています。しかし、それぞれの値段には倍以上の差がついているのです。

 近年の物件価格の急騰により、実際に「商品住宅」を買える人は富裕層のみ、という状態になっています。これはすなわち、「保障房」の対象に含まれる人が都市部の貧困層である、ということです。したがって、「貧富混同居住」の状態が発生するのです。
最近では、この「貧富混同居住」が多くの都市で話題になり、賛否両論を招いているそうです。

<上海市>

 上海市管轄の徐汇区は、市のなかで初めて「経済適用房」の建設に着手しました。もともとは、区域内一等地で土地を探り出し、「経済適用房」を建てるという計画でしたが、周辺にある既成の「商品住宅」の住民6,000世帯から反対の意見が出たのです。それは、以下のようなものでした。

1.その土地には、本来は老人活動センターや幼稚園、医療機関などの公益施設を作る予定でした。もし、この予定を変更して「経済適用房」を建設することになったら、これらのサービスを周辺住民がどこで利用するかが問題です。少なくとも、不便になることが予想されます。

2.周辺に高価な住宅があるため、もし「経済適用房」を作るとしたら、価格設定はどうするのか、という問題があります。低く設定すれば、腐敗が発生する心配は皆無であるとは言えないでしょう。

3.「経済適用房」が安く販売されるようになったら、自分の住宅価値が低下するのではないか、と懸念する周辺住民も少なくはありません。

 ある不動産関係者によると、市の中心部の住宅は、客の資産や収入によって明確に区分けされており、建築水準やアフターサービスが随分異なっているそうです。「商品住宅」のなかに「経済適用房」を入れることによって、市場の秩序が乱れることも考えられます。

 市政府は、周辺住民の意見を重く受け止め、「周辺住民の利益を考慮するように」と慎重に検討しているそうです。

(つづく)

劉剛氏【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。


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