地球環境保全の使命果たす
建設系無機汚泥の処理をはじめとした産業廃棄物処理業を手掛ける(有)名島産業建設。掘削工事から生じる泥状の掘削物・泥水など、建設産業廃棄物のなかでも再資源化が困難とされる建設系無機汚泥をリサイクルする技術を、12年以上も前にいち早く独自に開発。それらの技術を駆使して作られた再生材「N-ライト」は、官民へこれまでに20万m3納めた実績を持つ。その「N-ライト」が新たな可能性を見出している。
<「N-ライト」の新たな発見>
「N-ライト」の優れた製品力は、九州大学大学院工学研究院環境制御工学研究室教授の島岡隆行氏による研究で発見された。
N-ライトを1m3製造するのに排出するCO2量は16.6トン。一方、N-ライトを1m3使用した場合のCO2吸着量は34~59トン。N-ライトが最大炭酸含有量に達するまで炭酸化されるにはある程度の期間を要するが、N-ライトが製造されるときに排出されるCO2より2~3倍の数値が算出された。「産業廃棄物のリサイクル製品において、CO2吸着量が2~3倍という結果は極めて稀です。今後、さまざまなシーンで活用されることが期待されます」と島岡教授は語る。
これまでに、土木資材として国土交通省や都市再生機構、自治体、各民間企業へ20万m3の販売・納入実績を上げているN-ライト。しかも、単なる土木資材としてだけでなく、想定外の効果を発揮した事例もある。たとえば、N-ライトの使用によって優れた効果を発揮した事例には、次のようなものがある。
まず、福岡県篠栗町付近で不法投棄された産業廃棄物処分場から流出した高濃度の硫化水素を含んだ汚水を、N-ライトを使った簡易浄化プラントの設置によって、200ppmあった汚水濃度をわずか0.08ppmまで下げて無害化させたことがある。これは、大手水処理メーカーが半年かかってもできなかった処理で、それをたった1カ月で完了させて福岡県の環境部を驚かせた。
また、あるとき福津市の一般廃棄物処分場の後始末工事を同社が受注した。缶とビンしか埋めていないとの条件だったが、深く掘り起こすと生ゴミが出て、その際に悪臭が発生。その対処に困っていたのだが、人工ゼオライト開発に取り組んでいた社長のアドバイスで、N-ライトを生ゴミに被せてかき混ぜたところ、劇的に臭いが消えてクリアになったという事例もある。
<農地改良、水質改善を実現>
N-ライトは土壌を改善するという効果も発揮する。我が国の農地は酸性雨の影響で、石灰を撒くことによって農地の中性化を実施している。しかし、石灰を撒くと農地が固くなるという弊害も発生する。
そこで、N-ライトを農地に土壌改良剤として使用することで、土の中性化はもちろん、フワッとした軟らかい土にすることができる。また、農薬を使った農地にN-ライトを使用して土の中性化と農薬の分解を行ない、甘度の高い農作物を作ることにも成功。さらに、1反当たりの収穫高も増えた。水はけが良好になり、土中のカルシウム分が30%含まれる欧州の農地にも匹敵する、良質な農地への改善に成功した。
志賀島のいちご畑でも、山から金属成分を含んだ水がしみ出し、農地が熟田化していた。復元の策として、農地に3m間隔で溝を掘り、集水パイプを敷設して周辺をN-ライトで埋め戻したところ、30m先から透明で良質な水が出て優れた畑に再生することができたという。
ある牧場では、牛の飼育においてワラではなくオガクズを使用していたところ、2カ月経過して多量の湿気が発生。悪臭と大量のハエ発生の対処に苦慮するという事態が起こった。そこで、N-ライトを全使用分の半分の量を混ぜて使ったところ、悪臭が消え、ハエの発生もなくなった。清潔な牛舎造りに成功し、良質な牛を飼育できるようになったという。
水の汚染度を調べるデータの1つに、電気伝導率がある。福岡郊外のとある川の電気伝導率を調べたところ2,500msであった。通常は砂ろ過方式が多いが、その川でN-ライトを使用したところ、電気伝導率が250msと10分の1に減少。水質改善に大きく貢献した。
<真の産廃業者を目指す>
以上のように、優れた効果を上げるN-ライト。その秘訣は、「リサイクルする過程でセメント系固化剤を使用し、400℃近い熱風で処理しています。そのため、N-ライトのなかに小さな気泡が生まれてそこにバクテリアが発生し、硫化水素やアンモニアを分解する効果が得られるのです。これによって、産廃場、農地で目を見張るような改善が実現しているほか、水質改善にも効果を発揮しています」と、同社の於保社長は力説する。
建設汚泥を同社の独自技術によって再資源化したN-ライト。土木資材として、また水・土壌の改善など地球環境に大きく寄与する素材として、今後の展開に期待が寄せられている。
「産業廃棄物の不法投棄は後を絶ちません。2011年からは、不法投棄を行なえば3億円の罰金が課せられるという厳罰化が進んでいます。産廃業者がそれに該当します。また、産廃を出した企業も、価格を安価に叩いてコストを抑えた産廃業者に依頼すると、厳罰を負う可能性が高いのです。コスト安が良いのではなく、本当に信頼できて誠実に仕事を全うする企業に産廃物の処理を依頼すべきでしょう。
ただ、当社には独自技術によって開発したN-ライトがあります。建設汚泥は、単なる産廃物というより、原材料、宝の山です。N-ライトを地球環境保全のために、幅広いシーンで大いに活用していただけるよう、我々も努力を怠らず製品力を高めて最善を尽くしていきたいです。
本当のリサイクルには、入口だけでなく出口が肝要です。N-ライトは、まさにリサイクルの出口の結晶です。"本物の産業廃棄物処理業"を我々は自負し、これからも"埋まらない処分場"づくりに取り組んでいきたいです。環境保全に邁進して、社会貢献していく所存です」と、その熱い想いを於保社長は語った。
本物の産廃業者、そしてリサイクル業者として、同社はN-ライトの特許を取得しエコマークを認定された。また、同社取引行の全面支援も得ている。建設現場のみならず、あらゆる産業および生活のシーンでN-ライトが活用されることを期待したい。
【河原 清明】
[COMPANY INFORMATION]
(有)名島産業建設
代 表:於保 政美
所在地:福岡市東区香住ヶ丘4-9-25
那の津営業所:福岡市中央区那の津3-55-3
設 立:1972年12月
資本金:1,000万円
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