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末吉興一・前北九州市長に訊く~自治体経営の極意(4)
行政
2010年8月12日 08:00

4.「逆転の発想」によるプロジェクト
 2006年3月、九州初24時間運用の新北九州空港が開港した。この空港はいかにも北九州市らしい「リサイクル事業」として誕生した。コストが1,594億円と安い。94年に開港した関西国際空港の事業費が1兆5,300億円。その10分の1のコストで完成したことになる。
 この安さは、港湾整備と空港整備を組み合わせたことで可能となった。空港は周防灘の海上空港ですぐ近くには国際航路の関門海峡がある。海峡は潮流が速く土砂が溜まりやすいために、常に浚渫しておかなければならない。土砂は廃棄物として「苅田沖土砂処分場」や「新門司沖土砂処分場」で埋め立てられ、そこに人工島が出来た。空港はその人工島に造られた。まさにリサイクル事業である。
 空港ではスターフライヤー、JAL、ANAなどが就航し早朝、深夜便などで利用客は多い。ソウル、香港など国際便もあり北九州市民だけでなく、山口県からも乗客が集まる。
 「長期的視野に立ったプロジェクトで、それを積み重ねてこられた先人のおかげです」と末吉氏は話す。

 空港同様、北九州には「逆転の発想」から成功させたプロジェクトが多い。「アイデア次第で遊休地は宝の山に変わる」と末吉氏は言い続け、実践してきた。1901年、官営八幡製鉄所が開業して以来「北九州工業地帯」は1960年代の高度成長期の旗頭でもあった。煙突から出る「七色の煙」は繁栄の象徴とされたが、深刻な公害ももたらした。
 光化学スモッグによる北九州ぜんそくに苦しむ子供たち、洞海湾は魚も大腸菌も生息できない汚染した「死の海」だった。しかし、長年かけて市、企業、国、研究機関の努力で「公害克服先進地」に変貌した。
 環境産業が集積する「北九州エコタウン」は広大な遊休地を活用。当時、環境を汚染するPCB処理にもいち早く着手した。環境やリサイクル事業は国の第1号承認を受け産学官で構成される「北九州市環境産業推進会議」が事業の方向性を決めた。こうして北九州は「世界の環境都市」と呼ばれ、現在は環境モデル都市として多くの施策が検討されている。
レトロのシンボル・JR門司港駅 他にも新日鉄の遊休地を利用した「スペースワールド」は九州初のテーマパークとして人気を集めている。官民一体となって整備した「門司港レトロ」は年間200万人を集める観光地に変貌した。明治、大正と国際航路として栄えた門司港だが、関門トンネルや関門橋の開通で単なる通過地点となっていた。
 全国で唯一、国の重要文化財に指定されている木造のJR門司港駅を核に、旧商船三井ビルやアインシュタインも滞在した旧門司三井倶楽部などは独特のレトロ感覚が漂う。
 今ある資産を官民一体となって新たな生命を吹き込むのが、北九州方式である。

(つづく)
【関戸 幸治】

<プロフィール>
末吉 興一  (すえよし こういち)
末吉興一氏1987年から2007年までの5期20年間、北九州市長を務める。34年(昭和9)9月20日、兵庫県生まれ、75歳。58年、東京大学法学部卒業後、建設省に入省。60年、大分県松原・下筌ダム工事で用地課長。宮崎県企業局、自治省に出向、大臣官房地域政策課課長を経て85年、建設省国土庁土地局長から市長に立候補。市長退任後、外務省参与、内閣官房参与(地域再生担当)を務めた。現在は、(財)国際東アジア研究センター理事長(北九州市小倉北区)。著書に「自治体経営を強くする『鳥の目』と『蟻の足』」(出版社:財界研究所)がある。


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