民主党市議団が作成した吉田市長1期目の総括が、吉田市政のすべてではなかった。この総括において、まったく触れられていない事柄がある。それは、福岡市・約1万人の職員を統率するリーダーとしての吉田市長への評価。市職員への向き合い方について、まったく考察・評価されていないのである。
<吉田市政で廃止になった「DNA運動」>
人工島(アイランドシティ)事業をはじめ「継続」した事業がある一方、「廃止」となった取り組みもある。そのひとつが「DNA運動」だ。福岡市を発祥とし、現在、多くの地方自治体が導入。その成果を発表する全国大会まで開かれるようになった。全国的に極めて高い評価を受けていると言ってもよい。
「DNA」とは、「できる」から始めよう(D)、納得できる仕事をしよう(N)、遊び心を忘れずに(A)という基本精神を表す。1999年に発足した経営管理委員会の答申に基づき、「職員主体の運動を立ち上げ、市役所の組織の「遺伝子(気風、文化、制度)DNA」を変え、体質そのものを変えよう!」として、2000年4月、「DNA運動」が始められた。
具体的には、各職場で改革・改善のテーマを作成し、実際に取り組む。その成果は、全市発表大会「DNAどんたく」で発表され、優秀なものは表彰される。右写真は、「DNA運動」によって福岡市役所内に設置されたエレベーターの階数表示器である。プログラムを市職員が自作し、かかった費用は600万円。メーカーに同じものを発注すると3,800万円はかかると言われている。
現在もこの表示器は利用できる。そこには、「平成15年度 財政局総務課 DNA運動 この表示器は職員の手づくりで設置したものです」と誇らしげに書いてあるはずだ。
そのほかにも「DNA運動」によって始められた取り組みは多い。小児用点滴固定シーネ(保健福祉局子ども病院・感染症センター看護部)、番号発券機の設置と申請書の改善(西区今宿出張所市民課)など。どれも市民の生活に貢献するものばかりだ。
この「DNA運動」は07年3月をもって「廃止」となった。吉田市政が始まった直後のことである。一体、なぜ「廃止」になったのだろう。その理由を探るため市幹部OB、現役職員への取材を行なった。そのなかで吉田市政の問題が浮かびあがってきたのである。
*記事へのご意見はこちら