議員報酬の日割り制、副市長の任命、職員のボーナスカットなど、さまざまな専決処分を行ない、注目を集めている阿久根市長・竹原信一氏。市民の間では、市民団体が竹原市長に対するリコールの準備を始めている。そのようななか、弊社は竹原氏へのインタビュー取材を行なった。そのときの模様は、現在、NET-IBニュースチャンネルで動画を配信中である。本稿では、同インタビューを通して感じた、竹原氏が自らの行動によって提起する地方行政の問題、阿久根市政の現状について論じる。
1.「なる」ではなく「する」
今回の取材で、一番印象に残った竹原氏の言葉が「『なる』ではなく『する』」である。これは、取材の最後に筆者が「市長になったことで阿久根市の見方が変わったかどうか?」という質問に対する竹原氏の返答だ。
「市長になる」ことが目的ではなく、「市長として『する』」ことが目的――。以前、竹原氏は自身の講演のなかで、市長になった経緯について語った。航空自衛隊を退官後、郷里・阿久根市の建設会社で勤務した。その頃から阿久根市政に問題意識を持ち、街宣活動で市民へ訴え続けた。2005年、阿久根市議会議員選挙で初当選。そして08年、阿久根市長選挙で初当選した。市長選への出馬の理由について、竹原氏は「より多くの市民に、自分の声を聞いてもらうため。当選するとは思っていなかった」と説明している。
市長に当選した瞬間、市民へ届いた声は公約となった。市長として「する」ことは「しなければならない」ことになった。
2.行動による問題提起
専決処分をはじめ、竹原氏の行動はさまざまなメディアで問題視されている。問題は阿久根市の範囲を超え、鹿児島県はおろか国までをも巻き込んでいる。地方自治に関する現行の法制度に不備があるのではないか。阿久根市政の現状は、我々にそうした問題提起をしていると言える。
その一方で、竹原氏が専決処分をせざるを得なかった理由について、深く触れる者は少ない。竹原氏は選挙のなかで民意を得て当選した。公約という市民との約束を実行するのは、市長として当然のことである。「やり方がマズい」と、多くの有識者は口をそろえる。しかし、阿久根市の現状を踏まえた上での対案を示す者は少ない。それどころか、批判されることを恐れ、口をつぐむ者もいる。
また昨今、改革派首長が選挙で掲げた公約を無下に否決する地方議会の存在が目につく。首長からは「地方は議会の一元代表制」との声もあがっている。そもそも日本の地方自治体において「二元代表制」そのものが正しく機能していると言えるのだろうか。その点についての議論も含めなければ阿久根市政のことは語れないだろう。
【山下 康太】
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