4.仙波副市長がもたらす変化
メディアに変化が起きている。新たに副市長に就任した仙波敏郎氏を題材にしたドキュメント企画が放送された。仙波氏は、愛媛県警の現職警官時代に、警察の裏金問題を内部告発したことで一躍有名になった。竹原氏は言う。「政と官は犯罪性を共有することで結束する」。その言葉通り、仲間はずれにされた仙波氏は執拗な組織のイジメにあった。昇進は巡査部長止まり。16年で9回の転勤。そして署内ではボロボロの机が与えられた。それでも信念を曲げなかった仙波氏が、ついに定年退職を迎えた。そして、「自分が定年を迎えたことが、裏金問題の証拠そのものだ」と述べた。
話を元に戻そう。竹原氏はご周知の通り、大のマスコミ嫌い。その理由について竹原氏は、「地元メディアは体制そのものであり、権力の権化。公務員に手をつけると騒ぎ出す」と説明する。では、今回の企画はどのような経緯で作られたものなのか。取材のなかで竹原氏はそのタネを明かした。企画したのは、仙波氏を追いかけてきた中央のメディアだという。つまり、竹原氏を一方的に批判する地元メディアと違い、客観的な視点で阿久根市政が取材されたというのだ。
また、仙波氏という要素が加わることで、阿久根市の市政自体にも変化が起きている。8月3日、仙波氏の進言により、2009年7月31日付で懲戒処分になった元係長の男性が復職。また、同じく仙波氏の進言により、8月25日には臨時議会が召集される予定である。竹原氏は仙波氏とのつながりを「縁」という言葉で表現した。警察官と民間経営者、立場は違えど、体制と戦ってきた同志。ふたりの行動には、常人には計り知れない意思の疎通があるのだろう。
そして、仙波氏の起用には、竹原氏の政治戦略がうかがえる。一方に止まったままの振り子は、一旦動き出せば一気に対極へ向かう。社会正義の象徴とも言える仙波氏は、偏ったバランスをゆるやかに取り戻す存在ではないだろうか。
仙波氏については、近日、取材を予定している。竹原氏が掲げる「住民至上主義」の戦いを、どのようなものとして捉えているか。今後の展望を含めて話を聞きたい。
【山下 康太】
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