先に報じた、福岡市議会・民主市民クラブの市議らが作成した「吉田市政4年間の総括」に対し、公開するや否や、多くの疑問の声があがっている。NET-IBニュースは、現在、福岡市の有識者、市議をはじめ、疑問を抱く市民へ取材を行なっている。そのなかで共通する意見を踏まえ、ここで同総括文書の検証を行なう。
1.人工島(アイランドシティ)整備事業
問題視される総括には、「1990年代半ばまでのバブル経済にのった開発行政による市債残高の膨張など重い『負の遺産』を着実に処理し、アイランドシティ整備事業を市民の財産に変えるために事業継続を決断」とある。
吉田市長が2006年の福岡市長選で示したローカルマニフェスト(画像1参照)には、「人工島問題に道筋をつける」として、(1)設定している土地利用区分をいったん白紙に戻す。(2)「基本コンセプト」の作りなおし。(3)市長自ら国内外の企業へ売り込む。(4)(3)のための、法人税減税などの条件整備を行なう。などが列挙されていた。
これに対し、「どれも実現・実施していない」とするのが共通した意見だ。また、人工島で選挙戦の第一声を上げ、同事業の大幅見直しを期待させたことは多くの市民の所感として残っている。しかし実際は、「見直し」ではなく、「継続(事業推進)」へと舵は切られた。その事実に対する不満が根強く残っていることは、改めて論ずるまでもないだろう。
2.市債残高1,270億円の縮減
評価の視点にある「市債残高1,270億円の縮減」の箇所も異論が出ている。新たな起債を無くす、てっとり早い方法は何もしないこと。しかし、何もしなければ市政は停滞し、時代の変化にとり残される。今、「アジアの拠点都市・福岡」が「虚像である」との指摘があがっている。お題目だけで具体的な施策が無いと言われているのだ。
なお、この縮減自体にも異論が存在する。「市債縮減は前市政(山崎広太郎前市長)からの継続で、吉田市長自身は何もやっていない」との内容である。
プライマリー・バランスを考慮し、時代のすう勢に応じた施策を講じる。その際、新たな起債が必要となることもあるだろう。しかし、先々になって、その施策が効を奏し、市民の暮らしが豊かなものとなり、転じて負債が減るように考えていかねばならないのではないだろうか。単純に「負債を減らせば良い」というわけにはいかない。何もしなかった空白の時間、それ自体が『目に見えない負債』となるからだ。
3.須崎ふ頭再開発
総括には「福岡オリンピック・須崎開発から民主党の政策理念である『生活第一』『暮らし重視』の市政に方向転換した」とある。ここにも異論が存在する。なかには「捏造」との手厳しい表現で批判するものもあった。
それは、福岡市がオリンピック招致に落選した2006年8月30日の時点で、須崎ふ頭再開発も事実上頓挫しており、吉田市長の決断によるものではないという指摘である。念のために記しておくが、吉田市長が市長に就任したのは06年12月7日である。
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