法廷の場で明らかにしたかった
―内容がショッキングですし、実在の人物とおぼしき登場人物が役を演じている点で、事実なのではないかと思う読者が多くいると思います。
宮本 その点は出版社から最初に言われました。内容が内容だけに、訴えられることもあるかもしれない。問題が発生することが危惧される、と。私は「責任はすべて私がとるから出版してくれ」とお願いしました。もっとも、訴えられて法廷の場で争うことも想定内のことです。私のなかには、法廷の場で事実を明らかにしたいという思いもありました。ですから、訴えられることなど初めから恐れていなかったのです。
ところが、昨年末の出版から半年が過ぎていますが、いまだに何の音沙汰もありません。逆に、読者の方々から出版社に「うちもこれよりひどい仕打ちを受けている。宮本さんの活動を応援したい」という声が集まっていると聞きました。多いときには、日に5件も読者からの連絡があると言っていましたね。
人生を学んだ元頭取への思いから決意
―金融機関と戦うというのは、非常に勇気のいることだったでしょう。
宮本 私自身、銀行さんには非常にお世話になりました。本書のなかでも書いていますが、私が若い頃に肥後銀行の川田栄三元頭取からご厚意をいただき、人生を正しく進むことの大切さを学ばせていただきました。今も感謝の言葉がないくらいに思っております。
その川田元頭取が亡くなる数日前に「銀行はずるいから用心しなさい」と言われたのです。そのときは意味が分からなかったのですが、後で理解しました。
私は川田元頭取の最後の言葉を重く受け止めています。つまり、銀行の悪行を止めてくれという意味も含まれていたのではないかと考えたのです。ですが、あまりにも相手が大きすぎます。私のような中小企業が太刀打ちできる相手ではないのです。
泣き寝入りすることもできましたが、それでは川田元頭取の恩にそむくことになってしまいます。そこで、銀行により良くなってほしい、地方銀行は地方の企業を食い物にするのではなく、育てる存在になってほしいという思いをこめて、出版に踏み切ったというのが経緯です。
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