――たしかに防災の面で建設業の重要性というのが指摘されることは少ないと感じます。実際の報道でも自衛隊の活躍などは目にしますが、建設業者の活躍と言う見出しを見たことはありません。
永野 口蹄疫に関してですが、4月20日の発生当初から私たちは人員を派遣して協力しているのです。自衛隊が到着して作業している風景がテレビで見られますが、その数十倍、数百倍の人員と機材を使って作業をしているのです。
梅林 5m、6mといった深い穴を掘るというのは容易なことではないのです。ただ掘って埋めればよいという簡単なことではないということも知っていただきたいと思います。現場に出て作業をなさっている方々にはまったく頭が下がります。こんな労苦に対して世間の風まで冷たいとあってはいたたまれません。ぜひとも頑張っている人を応援するようなマスコミであってほしいと思います。
――やはりかつての談合、癒着といった悪いイメージが未だに払拭できていないのだろうと思います。災害復旧などで実際にスコップを持って最前線に立っているのは建設業界の方々です。そういったことは社会貢献として報道してほしいものですね。
川畑 かつてのイメージを拭い去ることができておらず、マスメディアの方々の意識もかつてのままということになると、私たちは待ちの姿勢を続けるわけにはいきません。自ら情報発信していくことが重要になってくると思います。これまでは河川や地域の清掃などのボランティア活動をしても、できるだけ目立ちたくないという意識がありました。自己主張することをいさぎよしとしなかったためです。けれども、これからは、たとえばボランティア活動しているときもボランティア活動中などののぼりを立てるなどしなくてはいけないのかも知れません。何だか恩着せがましくて好かないですが、自分たちがどれだけ貢献しているのかを知ってもらうためには仕方がないとも思います。
谷村 マスコミの報道のあり方の問題とともに、我々自身の情報発信能力の不足もあろうかと思います。これからは戦略的な広報活動ということに積極的に取り組んでいかなくてはなりません。マスコミ、学者、ジャーナリストなど影響力のある方々へ正しくメッセージを伝えて質問があったときには正確に答えられる人を育てていかなくてはならないのです。これとともに建設業が持っている防災、防疫、地域貢献にも力を入れて市民の方々のイメージをよくしていく活動にも取り組みたいと思います。
永野 確かに情報発信は強めていかなくてはいけないと思います。今はかつての状況とはまったく違います。なんとか利益をひねり出している状態なのです。業界の構造がそうなってしまっているため、これは仕方がないことなのかも知れないですが、かつてのイメージのまま暴利をむさぼっているような印象を与える報道は考え直してほしいと思います。マスコミの方々には業界に対する再評価をお願いしたいと思います。
梅林 何も私たちの業界の追い風になるようなひいきをしてくれと言っているわけではないのです。客観的に報じていただけたらそれでいいと思います。物事はひとつの側面しか持たないわけではありません。賛成の意見もあれば反対の意見もあるはずです。一方だけを取り上げると、それを見たり聞いたりした国民は惑わされてしまいます。中庸の精神で賛否両方の意見を報道してほしいと思います。たとえば我々は老人ホームを建築する際には引越しの手伝いはもとより、作業員が老人を背負って部屋まで連れて行って差し上げたり沿道の掃除までしたりしているのです。一所懸命にまじめに仕事をしているのに、一部の方が変なことをしたときに大きく取り上げられてしまうために業界すべてが同じだろうと思われてしまうのです。がんばっているところはがんばっているとして取り上げてほしいと思います。
――いいことは報道されず悪いことだけ報道されるために、建設業界全体が悪いイメージを持たれてしまっているのですね。
川畑 建設業の仕事はきつくて危険、給与は少ない。その上に社会正義に反すると思われてはいたたまれません。あまりにかわいそうです。人間は厳しい環境に置かれても社会的に認めていただくことができたらがんばることができるものです。それすらもなかったら希望が見えなくなってしまいます。そんな状況を少しでも改善するために情報発信は早急に手を打たなくてはならない課題だと思います。
<出席者> | |||
大分県建設業協会 梅林秀伍会長 |
長崎県建設業協会 谷村隆三会長 |
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宮崎県建設業協会 永野征四郎会長 |
鹿児島県建設業協会 川畑俊彦会長 |
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