今、全国レベルで地方議会・政務調査費(以下、政調費)のあり方が問われている。交付額をはじめ、使途基準、収支報告書の提出要領なども、自治体によってさまざま。一例をあげれば、意見交換会における茶菓子代。福岡県議会では、政調費からの支出が認められているが、他方で「目的外支出」として見なされる議会も少なくはない。
福岡県議会における政調費の取材を通して、「使途基準で認められている」ことを大義名分のように掲げる議員もいた。しかし、その基準は議員側で決められている。
現状では、県民が政調費の使い道について、すべてを確認・把握することは不可能に近い。なぜならば、領収書の写しを提出する議員が、個人情報保護を理由に各項目を墨塗りできる仕組みがあるからだ。公文書に情報開示請求をかけた場合、公開前に個人情報は隠される。さらに明らかにしたい場合は、住民監査請求をかけ、第三者機関の審議をもって公開の可否が検討される。しかし、元の文書がすでに墨塗りされた状態では、その手段を講じても明らかになるところはない。現状では、第三者がチェックできない書類を提出し、税金が支出されているということになる。
実際のところ、市民オンブズマンやマスコミの指摘によって、政調費の不正な支出(プラモデルのカタログ、官能小説、過剰とも思える飲食代など)が明らかになっている事例が多い。指摘を受けた県議の何人かは、口を揃えて「誤って貼り、提出してしまった」とコメントしている。それは県議会、各会派内ですら、十分なチェックを行なえていない実態をさらけ出したと言ってもよい。その間違いで支出されるのが税金であることを繰り返し述べておく。
全国市民オンブズマン連絡会議の調べによると、2010年8月5日の時点で、日本全国における住民監査請求によって返還勧告が出た政調費の事例は、金額にして合計約9億円(8億9,652万3,328円)という。
「信頼のできない人間」「不正を行なう人間」を議員にした責任は選んだ有権者にあるとの声もあるが、これは「だまされる方が悪い」と言っているのと同じ。残念ながら選挙時に「政調費を私的なことに使います!」と訴える正直者はいない。政治への信頼を損なわせているのは誰か。政治不信のスパイラルから、我々はいつ抜け出すことができるのだろうか。
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