<GDP、就労人数ともに1割 費用対効果だけでは測れない公共事業>
――建設産業は重層的な構造を持っていると思います。大手ゼネコン、準大手・地場ゼネコン、専門業者など、裾野の広い産業です。地元での経済影響力や存在感などは全産業の中でも一番大きいのではないかと思います。
川畑 九州は北海道、東北とならんで公共投資に依存する割合が高い地域です。大都市と違って、地方では民需があまり期待できないという現実があります。そんな中で公共投資の金額が縮減されるということは地方で暮らす人々を路頭に迷わせることになりかねないのです。GDPにおいても就労人数においても、日本国内の1割程度を占めている産業なのです。ここをきちんと理解した上で政治的な判断もしていただきたいと思っております。
谷村 私たち建設業界も無駄な公共工事をしたいというのではないのです。建設業を保護してもらうために発注を増やしてほしいという考えは誰も持っていません。そもそも、公共工事という名前の工事はひとつもないのですよ。それぞれになに道路をどうする工事という名前がついているのです。これはその地域の生活をどういうふうによりよいものにしていくかという考えや夢のようなものが詰まっているのです。公共工事を減らすということはまさに地域の発展という夢を小さくすることにつながるのではないかと思います。
永野 よく費用対効果を測定して優位性を考えるということをおっしゃいますが、地方によっては当てはまらないのではないかと思います。一日に走る車の数は都市部と農村部ではあきらかに異なりますが、農村部ではその道路がないと死活問題になってしまうこともあるのです。東京で2キロの環状線をつくるのに1兆2千億かかると聞きます。宮崎県でその金額を公共投資に充てていただけるのなら113万人が10年間も暮らせるのです。無駄な工事というと、そういうことを言うのではないでしょうか。たしかに地方では都会ほど車も通らないかも知れませんが、そこに暮らす人々にとっては、大変重要な問題なのです。
梅林 公共事業というのは一見無駄に見えても本当に無駄なものというのは、ほとんどないのです。もちろん費用対効果も高いほうが望ましいのですが、あまりにも財政的な部分のみを言うのはいかがかと思います。そもそも利益が出る工事ならば民間が先を競ってやるはずですから。利益は出なくても地域の生活や活性化につながるのならばやってみようというのが公共工事ではないかと思います。大分でも東九州自動車道が完成したおかげで、急患のおじいさん、おばあさんが福岡の先進医療施設にまで搬送されて助かるケースが多く見られるのです。都市部は医療面も充実しているのでしょうが、農村部などでは充分ではないのです。それをおぎなうための道路、高速交通手段は必要だと思います。
川畑 九州他県と同じように鹿児島にも多くの離島があります。50人、30人しか住んでいないところもあります。そこには港湾設備への投資が不可欠なのです。桟橋があるということが、島民の生活を支えているのです。費用対効果で言ったら、まるで話しにならないでしょうが、それがすべてではないと私は思います。日本では7割の人口が3割の国土に住んでいると言われます。そういう状況でアンケートをとれば大多数は都市部に住んでいるわけですから、インフラは充分であるという結論が得られるでしょう。けれども、残り3割の人、つまり7割の国土にはまだ手付かずの状態が放置されていることがあるのです。その部分をしっかりと議論していただかなければ、地方はますます取り残されてしまいます。
――費用対効果では測ることができない部分が明らかにあるのですね。都市部に本拠地を持つ大手メディアはそのことが理解できていないのかも知れません。地域でインフラの充実がなければ、開きすぎた地方格差がますます開くことになります。利益誘導といううがった見方はやめて、地域にとって本当に必要なものをあてがってほしいと思います。
<出席者> | |||
大分県建設業協会 梅林秀伍会長 |
長崎県建設業協会 谷村隆三会長 |
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宮崎県建設業協会 永野征四郎会長 |
鹿児島県建設業協会 川畑俊彦会長 |
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