山本 この問題が改善できれば、日本からのお金はものすごく価値があるものだと思います。しかし、大半は国内で使われてしまいます。また仮にもらうにしても、どこでいつ何をどう使うのかということに関して膨大な書類をつくらなければならず、今の我々の人手では到底手に負えません。ですから、こちらから遠慮申し上げているのが実情です。
大谷 私は現地を見て切実な思いから現在の組織をつくりました。その思いが他にも伝わったのか、国内に拠点が10カ所できましたが、すべてボランティアです。お金ほしさにやっている人は1人もいませんし、歩幅は違えど皆が同じ方向を向いています。
カンボジアのなかでも格差が出てきていますが、我々の活動地域は基本的に貧しい村で、地雷を撤去する必要があるところです。そうした村にはバイク1台すらありません。極端に言えば、人身売買も行なわれているようなところです。戸籍がなく、州政府が把握している村人の数と村長が話す数がまったく違うから、そうしたことが可能になるし、エイズなどのいろいろな問題を抱えています。
ですから協力してくれる1人ひとりが、自分たちのできる範囲のことをやるようにしています。私が国内で一番力を入れているのは、学校などでの講演活動です。我々の組織で一番特徴的なのは、北海道から沖縄までの子どもたちが自分たちで考えて募金活動をすることです。我々の話を聞いた子どもたちが何かを感じ、そうした行動に移っているのでしょう。
そうして集まったお金は、絶対に変なことには使えません。ですから、100%カンボジア現地に届くようにしているのです。そして、報告をきちんと上げるようにしています。たとえば、古賀市の舞の里小学校からは空き缶を集めたお金をいただきましたので、それで水を確保するための溜め池をつくりました。また、福岡市立愛宕浜小学校からはフリーマーケットで得たお金をいただきましたので、現地の学校の子どもたちに制服をつくりました。そうして見えるかたちで、「君たちが集めたお金はこうして使われました」というのを見せています。そうすることで、「自分たちの活動がこうして活かされているのか」と意識してもらうことが大事だと思います。
カンボジアの子どもたちにも、自分たちと同年代の日本の子どもたちがそうした活動をしていると思わせることで、支援に頼りきりにならないようにしています。そして、日本の子どもたちが中学生、高校生、大学生と大人になっていくなかで、次の支援の輪ができていきます。
【文・構成:大根田康介、長嶋絵美】
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