<自らの手で明日をつかむ>
――建設業界の今後についておうかがいします。とても苦しい状況にあることは充分に分かりました。けれども、そんな中でも建設業がなくなってしまうことは国にとっても地域にとっても大きな痛手になることは確かです。今後、建設業界はどのような歩みをとるのがベストなのでしょうか。
谷村 他のさまざまな業種では官庁に対して非常に強く要望を出しているのを見受けます。私たちは、これまで強く主張することを控えてきました。これは裏を返すと恵まれた状態が続いたことによるのではないか思います。これからは官庁への主張も含めて活動を強めていくことが重要です。今まで建設業は、たとえるならば池の中の鯉でした。腹が減ったら麩を投げ入れてもらっていた状態です。最初は少ない数だったのが、子を産み孫を産み、池に入りきれないほどの数になってしまいました。そこで飼い主が給餌をやめてしまったわけです。どれだけ水面で口を開いても麩は投げ入れてもらえません。池の中の鯉はやせ細って数を減らさざるを得なくなったのです。このまま、全員が餓死を待つ状態ではいけないと思います。自分の存在価値を自分自身で主張すること、池の中でエサを待つのではなく自分から新たな分野に進んでいくことも必要になるでしょう。そういう気構えがなくてはいけないと思います。一人ひとりの声は小さいですが、それを調和させてハーモニーをつくっていかなくては建設業に明るい未来はないのではないでしょうか。
川畑 たしかに今のままでは明るい未来を見出すことはできないと思います。これからは維持修繕だけの建設業になってしまうのではないか、新たなものをつくる仕事はなくなってしまうのではないかと本当に心配です。日本を見直してみて本当にインフラが充分なのかということにも疑問があります。異常気象が続き、洪水の危険もより身近になっていますし、地球温暖化による海水面の上昇も危惧されています。これらは国民の生命に関わる大きな危機です。それに充分対応できているのかというと、いまだされていないのが現状です。安心と安全のために、やるべきことは数多くあるのです。生活を向上させるためのインフラもしかりです。地方農村部では都市に比べてまだまだ充分とは言い切れません。やるべきことはすべてやって、公共工事は無駄であるという結論を出すには日本はまだ若すぎるのです。これからは自分たちで情報発信して、地域の本当の声を伝えていくことにもチャレンジしていきます。
梅林 逆風は確かに吹いていますが、大手寡占の状態にはならないだろうと思います。大手は大手、地場は地場の仕事が必ずありますし、これからもそれは変わらないと思います。どんな時代であっても、視点を変えれば必ず出番はあるはずです。そのためにも技術を絶えず向上させ続けて自分たちの中に持っていなくてはなりません。油絵を描くとき、最後に一筆入れることで絵が生き生きとしてくることがあります。それと同じように、私たちもその一筆が分かる技術者でなくてはならないと思います。そのためには建設のことだけではなく、一般的な知識や流行、生活スタイルの変化など知っていなくてはなりません。知識を含めて、業界がレベルアップすることが建設業界には求められているのではないでしょうか。
永野 かつて870社あった会員数も520社にまで減少しました。状況はきわめて厳しいと言えます。けれども、県民の社会生活を守っていくという意識をしっかり持っていかなくてはいけません。お金だけではなくて、社会貢献をしているという自負が建設業界には必要なのです。仕事がなければ惰性的に意識が低下するのも理解はできます。メディアによるマイナスイメージがモチベーションを下げてしまっている面も否めません。けれども、それに負けているわけにはいかないのです。情報発信をすることでネガティブな印象を払拭し、地方がどうやって生活を送っているのかを中央に届けることが建設業界にとって必要なことだと思います。
――建設業界の明日は自分たちの手で拓くという力強い言葉を聞き、感銘を受けました。今は確かに厳しい状況下にあると思います。けれども現状を打開できるのは当事者である建設業界しかないと思いますし、それは実現可能だと思います。本日はご多忙の中、ありがとうございました。
<出席者> | |||
大分県建設業協会 梅林秀伍会長 |
長崎県建設業協会 谷村隆三会長 |
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宮崎県建設業協会 永野征四郎会長 |
鹿児島県建設業協会 川畑俊彦会長 |
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