山本 大谷さんにひとつお聞きしたかったのですが、生徒会からもらった文房具を何とか名古屋の子たちが現地の人たちに渡す方法はありませんか。現地で交流できる方法はないかなと考えています。
大谷 物を渡すことについて、実は問題があります。我々は寄付に関しては、基本的には物ではなく現金でもらうようにしています。そして、そのお金で現地の商品を買うのです。なぜかというと、カンボジアは農業しか産業がなく、現在ではかろうじて軽工業ができるようになった段階です。そこに日本から無料のノートや鉛筆をもっていってしまうと、向こうで伸びようとしている産業に打撃を与えることになってしまいます。
山本 なるほど。
大谷 よく、もう着なくなった服や文房具をあげてくださいと言われます。そういう場合は、日本国内でお金に替えましょうと支援者には言っています。カンボジアなら、日本の10分の1で買えますから。極力、現地の産業を伸ばすようなかたちで支援したいですし、そうすることで雇用も増えますから。全国のNGOでも、そういう流れになりつつあります。とにかく誠意が無にならないように、支援してくれる子どもたちの気持ちを傷つけないようにしなければなりません。
―インドネシアの経済状況はどうですか。
山本 カンボジアより幾分かは良いと思います。我々が行っているのは南スマトラ州というところです。街はまだいいのですが、我々はそのもう少し奥の村に行っています。電気も何もありません。お金がたまれば、いずれ私はそこに太陽光発電をつけようと考えています。今は石油で動かす小さな発電機しかなく、電気は食事のときの2時間くらいしかつけません。風呂などもありません。道路もなく、船で物資を運ぶしかありませんし、学校にも船で行き来します。教科書は2人で1冊を使うといった状況です。小学校4年生の子が妹の面倒を見ながら授業を受けるといった風景もあります。日本の子どもたちはそうした光景を見て、「僕たちはぜいたくしていたんだ」と言います。
大谷 そうしたことに気づくことが大事ですよね。
【文・構成:大根田康介、長嶋絵美】
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