9月3日朝、福岡、佐賀、熊本、宮崎、鹿児島の5県警で構成された合同捜査本部によって、丸美の元役員ら5人が有価証券偽造および同行使の疑いで逮捕されたことがわかった。今回の事件は、企業の社会的責任を問うという点で大きな教訓を残した。弊社では、緊急記者座談会を開き、丸美の事件と現在追っている案件を絡めながら、今問われている経営者の資質と企業の社会的責任のあり方について議論した。
|
<錬金術が社債詐欺に>
田口 先日、丸美の金丸近氏、宮﨑隆氏、増永浩一郎氏、宮崎増恵氏、深野修氏の5人が容疑者として逮捕された。2008年8月5日に丸美が民事再生法の適用を申請したとき、同社が管理・運営するリゾート型マンション預託金や社債を購入した人たちに、弁護士から「配当見込みはほとんどない」と告げる文書が届いた。直後の債権者説明会でも、総資産や社債の不可解な状況について何ら説明がなされず、ついには熊本で「丸美被害者の会」が結成されたという経緯がある。
経営陣は結果的に一般人をだましてカネを集めていたことになるが、そんな会社を民事再生するのはおかしいし、それを無理やり通そうとする弁護士の姿勢にも問題があるだろう。
児玉 刑事事件の弁護自体は金丸氏個人の権利として当然だが、刑事事件になるような会社を民事再生させることはおかしい。そんなことが許されるはずがない。
田口 とくに、今回の件は架空社債であることが、08年10月の段階で判明していた。刑事事件化することが明らかに予想されたにもかかわらず、民生法の手続に手を貸した稲美氏ら弁護団は職業倫理を問われることになるだろう。なお、現在の状況としては、民事再生手続きの計画案が通って事業譲渡も済み、核となる部分は終わっている。事実上、裁判所による再生終結の判断待ちという状況といえる。
鹿島 時間がかかり過ぎたという印象がある。破綻から2年、家宅捜索から1年3カ月経った。一説には、その間に個人資産を巧妙に売り払ってしまったのではないかという話もある。そうなると、被害者からすれば逮捕で一定の区切りはついたかもしれないが、出資金の回収という面ではほぼ絶望的ではないか。
刑事責任をどこまで追っていけるか。金丸氏と宮﨑増恵氏は実刑になる可能性が高いだろう。残り3人を含めてどこまで責任と真相を探れるか、被害者も注目していると思う。
過去にさかのぼれば、金丸氏はもともとそういう資質の持ち主だったのか、それともカネを握ったことで豹変してしまったのか。カネの流れでいうと、佐賀銀行との葛藤のなかでビルなどの資産をオフバランス化できてしまったことで、経営のピンチを乗り切ったと同時に、大きなカネを生み出す錬金術を身につけた。それで今回の社債詐欺につながっていったと思う。
【文・構成:大根田 康介】
[COMPANY INFORMATION]
代 表:金丸 近、宮﨑 隆
所在地:福岡市中央区大名2-4-5
設 立:1984年9月
資本金:10億6,134万5,000円
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら