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ようやく実る丸美被害者の訴え、辣腕弁護団の職業倫理を問う声も~金丸・丸美終焉シリーズ(10)
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2010年9月14日 17:36

 「ようやくここまで来ました。でも金丸氏の責任追及はここからが始まりです。」丸美被害者の会に籍を置く女性被害者は、嬉しさを滲ませながらも、この先も続く戦いを前にして気を引き締めながら語る。
 現在も民事再生法下で事後処理を進める丸美。ほとんどの事業譲渡を済ませた同社はもはや「抜け殻」とでも言うべき状態である。反社会的な企業の民事再生はとん挫すると言われるものの、事業を譲り受けた会社などの利害関係人におよぶ影響の大きさに照らせば、ここまで進んだ手続を無に帰することには無理があろう。事実上、あとは終結宣言を待つばかりというのが現状だ。
 丸美破綻から丸2年。逮捕までの時間がかかりすぎた感は否めない。被害者らの怒りは、丸美金丸氏に対してはもちろん、犯罪的商法に手を染めた丸美の民事再生に手を貸した稲美氏率いる弁護団にも向けられている。
 稲美氏はかつてロッキード事件で主任弁護人を務めた名のある弁護士である。当初、丸美は村井弁護士と岩熊弁護士(福岡市、はかた共同法律事務所)を立てて民事再生に臨んだが、開始決定が下りた直後に両氏を解任。申請代理人を稲美氏率いる東京の弁護団にすげ替えた経緯がある。

 この交代は、債権者・被害者への対応を一変させたという。確かに債権者説明会で目にした解任前の両弁護士の対応は、金丸氏を守りながらも被害者側の声に謙虚に耳を傾けるというものであった。しかし、金丸氏にはこれが「手ぬるい」と感じられたのであろうか。交代後の弁護団の対応は画一的で「誠意にかける」(被害者談)ものになっていったという。被害者らが求めていたものは真相解明と金丸氏の責任追求であった。しかも、丸美破綻の2カ月後には架空社債の実態が白日の下に晒され、刑事事件に発展することは火を見るより明らかな事態となっていた。民事再生の申請代理人である以上、手続をすすめようとする立場は理解できる。とはいえ、弁護士は社会正義の実現者でもある。手続の過程で反社会的・犯罪的商法の真相解明に協力してくれるのでは、との淡い期待が当初の被害者側にはあったようだ。

 弁護士側は「調査している」とはいうものの、具体的な話は一切してこない。対応は債権者窓口に一本化され、扱いは事務的かつ画一的。前任の弁護士の対応がこまめだっただけに反動も大きく、高齢者の多い債権者側は次第に態度を硬化させていった。先の被害者女性は「率直に言えば、民事再生であろうが破産であろうがどちらでも良かったのです。我々が求めていたのは、お年寄りからなけなしの金を騙して巻き上げた金丸氏らの責任追及と真相解明でした。ですが、民事再生を進めようとする弁護団からは、金丸氏の責任や丸美の悪徳商法の真相についての十分な説明はありませんでした。時間が経てば経つほど財産隠しなどの危険性は高まります。事件も風化してしまいます。弁護士さんが真相解明に協力してくれないのであれば、長い時間をかけて僅かなお金を手にする民事再生よりも、短期で決着のつく破産を進め、刑事事件を含めた真相解明・金丸氏らの個人責任追及を優先させるべきという方針に固まったのです」と語る。結果として民事再生手続きは難航。一時は再生計画案の可決が危うくなり、投票をやり直す異例の事態にまで発展した。債権者・被害者を「対策すべき相手」(債権者窓口の名称は「債権者対策室」)と位置付けた弁護団の姿勢が招いた当然の結果といえよう。

 かつてロッキード事件では世論を敵に回しながら正義と法の支配を貫こうとした稲美弁護士。反社会的企業の民事再生に手を貸した今回の件は「依頼者の利益」という耳触りのよい言葉だけでは蔽いきれない。彼らの正義はどこにあるのだろうか。


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