<バブルの膜に覆われて>
児玉 一方で、バブル崩壊によって金融システムが変わる最中、SPC・不動産流動化によるオフバランス化など不動産投資の新しいスキームが登場してきた。金丸氏は独学でこれらの手法を体得し、いろいろな物件を買い集めて資金調達の錬金術としていった。
鹿島 03年9月に本社ビルを流動化している。これが最初だろう。
児玉 この時代の流れに乗っていた頃は、事業を立ち上げるときの良い面がクローズアップされていた。もはや佐賀銀行からの資金調達は不要ということで借金をすべてたたき返すなど、ここでもヒーロー的な側面があった。
それで味をしめて、福岡市、北九州市、熊本市などでオフィスビルを買い出した。それまではまだ良かったが、鹿児島の霧島や熊本の菊南、大分の湯布院にあるリゾートホテルにまで手を出した。それとともに、バクチ打ちのやり方が図に乗り過ぎてしまった。
一方で、ライブドア株で数億円儲けたりして、株投資のリターンが莫大になっていったはずだ。これが失敗したのだろう。ここからダーティな側面が出てきて、今回の刑事事件につながったという流れになったと思う。
大根田 丸美が破綻したのは08年8月。ちょうどリーマン・ショックの直前だった。これより少し前の07年、不動産業界ではSPC依存型ビジネスがピークを迎えていた。"建てて売る"手法がまかり通っていたが、同時にこの手法を生み出したアメリカ経済はサブプライムローン問題で破綻寸前だった。
日本では若干その余波が遅れてきたが、当時はなぜか楽観論があって、「まさかこんなことになるとは」と感じたデベロッパーも少なくなかっただろう。その後はご存じの通り、一気に不況となって不動産業界での倒産が続発したわけだが、丸美の件もこうしたプチバブル景気の膜に覆われて実態が見えにくかったことが、被害を拡大させてしまったのではないか。
<フェロシルト問題>
田口 企業の社会的責任(CSR)という観点からしても、一般人や取引企業に詐欺被害を与えることは決して許されるものではないと考えている。そういう意味で、現在問題となっている愛州産業や日本リソースの2社について、今回の件と絡めて解説してもらいたい。
河原 事業は経営トップの理念や人間性というのが問われると思う。カネ儲けやバクチの話が出たが、会社経営は一か八かでやるものではない。丸美の金丸氏にしても、ずっとビル管理を地道にやっていれば、ここまでの問題には発展しなかっただろう。
ホテルに手を出したり、実態のない会社をつくったり、有価証券を偽造したり、なぜそうなってしまったのか。企業の真の存在意義が問われるのが、今回のケースだと思う。私が調べている愛州産業もしかりだ。
大阪市に石原産業という、三重県の四日市ぜんそくの原因をつくった企業がある。そこがフェロシルトというリサイクル製品を、土壌補強・埋戻材として01年から販売を開始した。しかし、05年に環境基準を超える六価クロム、フッ素、放射能物質のウランやトリウムなどが検出されたことで、産業廃棄物と判断された。つまり、放射能を発する猛毒物質をつくっていることが5年前に発覚したのだ。
これでフェロシルトは使用禁止となり、産業廃棄物扱いとなったが、どこの自治体も引き取らないという問題が発生した。これが当時の三重県知事が辞任した原因になった、とも言われている。
田口 たしか、フェロシルトは「使える素材」だとして、一時期は各所で紹介されていたこともあったと思う。
河原 実際はまったく使えず、山積み状態になっている。そうした有害物質が、三重から海路で門司港に運ばれ、そこからトラックに積んで陸路で福岡の糸島半島に運ばれている。「あれは何だ」と疑問に思った関係者が調べたら、愛州産業が間に入ってフェロシルトを廃棄していたという事実が分かった。
これは、許可を出す福岡市も認めるところだ。持ち込まれている物質がフェロシルトであることも、きちんと認識している。しかし市は、産業廃棄物として登録されており、しかるべき手続きを経ているから大丈夫だと言い張っている。
【文・構成:大根田 康介】
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代 表:金丸 近、宮﨑 隆
所在地:福岡市中央区大名2-4-5
設 立:1984年9月
資本金:10億6,134万5,000円
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