そのとき、会場は物々しい雰囲気に包まれていた。大勢の警察が会場を囲み、道路を挟んで向かい側では30~40人の保守系団体がホテルに向かって怒号を浴びせている。
これは、9月14日に行なわれた民主党代表選(臨時党大会)会場の外の様子だ。14時前に現場であるザ・プリンスパークタワー東京(東京・芝)地下2階の宴会場に到着したが、会場内はすでに満杯だった。国会議員412人のほかに、地方議員、海外の外交官、政財界・業界団体からの招待客、報道陣など、ざっと見て2,000人以上の関係者で埋め尽くされていた。
公式発表では、党員・サポーターが34万2,394人(300ポイント)、地方議員2,382人(100ポイント)、党所属国会議員411人(822ポイント)の計34万5,187人、1,222ポイントの行方を参加者全員が固唾をのんで見守っていた。
14時10分、会の進行について説明がなされ、その後、候補者の決意表明へと移った。持ち時間は小沢氏と菅氏がそれぞれ15分ずつ。
最初に壇上に上った小沢氏は、やや緊張感のあるかすれ声で、まず「私事」について陳謝。日本の危機的状況に立ち向かうなかで、本当に自分が出馬していいか自問自答したが、「やるしかない」と決意してこの場にいることを説明した。そして、東アジア共同体の話をし、鳩山氏との連携をにおわせるとともに、官僚主導の政治体制を批判し、政治主導に切り替えるべきだと主張した。
一方の菅氏は、自民党政治を変えなければといけないという気持ちで30年間政治活動してきたことを説明。首相として本当に耐えられるか葛藤したが、「全員参加の民主主義」を実現させるために出馬したとした。途中、ありとあらゆる職業・職種をズラズラと列挙し「全員参加」を強調。"菅節"とでも言うべき、かつての市民運動家らしい一面を見せた。ただ、話は全体として抽象的で、国際感覚のなさも垣間見えた。
14時45分、投票開始。衆・参の議員が1人ずつ名前を呼ばれて投票。15時15分に投票が終了し、20分から開票を始めた。
15時35分、ついに結果発表のときがきた。しかし、ここで呆気にとられてしまった。最初に発表された党員・サポーター票のポイント数が、小沢氏51ポイントに対して菅氏が249ポイントと、この時点で圧倒的大差がついたのだ。議員100人分の差がつき、「これで決まった」と感じた瞬間だった。
蓋を開けてみれば、結果は小沢氏491ポイント、菅氏721ポイント。最後は2人が登壇して健闘をたたえ合ったが、なかには憮然とした表情で会場を去る議員もいた。きっと小沢氏に投票したのだろう。
ひとつ気にかかったのが、マスコミ関係者の多さ。ざっと見渡しただけでも、700~800人はいただろう。見方によっては多数派勢力だ。ある関係者は、「マスコミは政治家をタレント化している。今回の結果もある意味、彼らの思惑通りではないか。これからは、菅氏による小沢氏の処遇についての憶測が、面白おかしく報道されるだろう。組閣が見ものだ」と語った。
【行政取材班】
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