<「ぜいたくすぎる」との反対意見>
内陸部の貧しい地域で、今も教育を受けられない子供たち。賑やかな都市のなかで出稼ぎをする両親の経済状況によって学業を中断せざるを得ない子供たち。さらには、田舎の小学校でわずかな給料しかもらえない先生たちなどの状況を考えれば、1.1億人民元をかけてひとつの小学校を作るのはぜいたくすぎるとの指摘があります。
たとえば「陽澄湖小学校」は収容生徒人数が1,400名であるのに、現時点では700名ほどで、周辺の人口が2万人しかおらず、いつフル稼働できるのか、いつ最大の社会効果を出せるのか、問題となっています。
さらに、1.1億人民元の資金投入について「地元政府官僚が自分の政績や名誉を獲得するためではないか」と疑う声もあります。豪華な庁舎を作るとなると強い反発を招くので、教育に使えば理解や認めをもらいやすくなるとの思惑もあるのでしょう。しかし、資金があっても「面子プロジェクト」をやるのは無駄使いだといえます。
<「豪華でもかまわない」との賛成意見>
学校の在り方には、人々はそれぞれの考えを持ちます。教育普及と教育品質向上という別の立場から見れば、必ず異なる答えが出てきます。
2009年、国のまとめで、全国の義務教育実現率が95%に止まります。その他の5%の地区にとって、小学校を作ることは、政府の行なうべき一番の急務だと思います。それと同時に全国にある、たくさんの校舎が建築安全や施設老朽化などの切実な課題を抱えています。
一昨年の四川大地震で、6,898軒の校舎が倒れたこともあって、より豪華で、より頑丈な校舎を建設するのは、大衆の熱い期待だと否定できないでしょう。
蘇州の「豪華な」小学校にしても、一部の施設は、すでに海外で普及しており、大したモノではありません。一部の子供たちが先に幸せを享受していることは、社会全体にとって、残りの子たちに幸せを作ってあげる更なる努力の原動力になるのではないでしょうか。
もっと重要なのは、「陽澄湖小学校」が「豪華」にもかかわらず、費用の回収は「庶民的」であることです。その分のコストを生徒や保護者に押し付けることは一切ありません。地元の子や出稼ぎの子に対して、平等に扱っています。学校側が国の義務教育政策を徹底的に実行すれば、疑問を出すべきではありません。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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