<ブランド弁護士の実力>
ディックスクロキ・黒木氏だけではなく、その代理人弁護士にまでプレッシャーを掛けてきた福岡銀行側の藤原総一郎弁護士。企業法務の世界では既に「ブランド」と評されるほど知れ渡った存在と聞く。数多くの雑誌でビジネスの鍵を握る弁護士として取り上げられ、経済産業省が音頭をとった「事業再生に係るDES研究会」メンバーにも名を連ねる大物である。特に破綻企業の処理で多くの実績を積み、福岡との関わりでいえば、久留米のアサヒコーポレーションやベイサイドプレイス博多埠頭を運営していたサン・ピア博多の再建・破綻処理にも携わった。
引く手数多の売れっ子弁護士。それ故に難しい案件が持ち込まれるのであろうか。08年に破綻した広島の上場デベロッパー(当時)アーバンコーポレイションが破綻直前にBNPパリバ証券と組んで行った転換社債発行の際、同社はスワップ契約の存在を秘諾。後にスワップが引き金となりアーバンは倒産に至るが、同社の代理人を務めていた藤原弁護士は、「会社の行為に違法性があるとは認識していない」(08年8月19日・朝日新聞)とのコメントを残した。しかし、会社の存亡にかかわる重要な事実を知らされなかった株主らの怒りは収まらず、藤原弁護士には一般投資家らからの批判が集中した。
その藤原弁護士だが、周辺関係者によると、今回の民事再生法事件の監督委員である植田弁護士と、先のベイサイドプレイスの一件で対峙した経験があるという。福岡の大御所弁護士を擁するディックスクロキ弁護団に睨みを利かせることができ、監督委員の人となりをも把握した人物として、藤原弁護士の起用はまさにうってつけであった。事実、同氏らの登場により、植田監督委員の判断は一変。従来「報告を懈怠したとの責めは負うとしても、特段の不正が行われたとの事績はな」く「追加弁済を速やかに実施すべき」とされていたものが、「重大な報告義務違反であり」「自力再生の資格についての疑念を持たざるを得」ないとの判断へと変わり、7月30日の追加弁済は延期を余儀なくされることになる。
【田口 芳州】
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