<割れる意見>
福岡銀行からの申し出は、今回の件を和解金3,000万円でトータルに解決しようとのものであった。1億3,066万円から3,000万円への減額である。しかも、相手は福岡で厳然とした力を誇る福岡銀行と藤原氏率いる辣腕弁護団。一見すると渡りに船の有難い和解提案のようにも思われる。
この和解案を前に、ディックスクロキの内部でも意見が大きく割れたという。和解案を飲むべしとする弁護士側に対して、やましいことは一切無いとして徹底抗戦を主張する黒木氏。
弁護士側にしてみれば、黒木氏にも報告義務違反の弱みがあるし、内々に和解金を支払って早期に手続を終わらせたほうが最終的には依頼人の利益になると考えたのであろう。
しかし、黒木氏の態度は頑なであった。「報告義務違反」というが、不確定な状況(還付金は税務調査後に調整がなされる)で変な期待を持たせるべきではないと考えたのであり、全額が追加弁済に回って弁済額も増えたのに悪人よわばりされるのには納得がいかない。もしここで内々に3,000万円を支払うことは、他の債権者に対する裏切りになるし、後で表沙汰になれば、彼らも福岡銀行と同じ行動に出るかもしれない。福岡銀行サイドにだけ二重取りをさせることはモラル的にも納得できないとして、両者の主張は平行線を辿ることとなる。
思い悩んだ黒木氏は各所に相談を持ちかけ、東京の別の弁護士にも相談したという。取材に対して黒木氏は「福岡銀行とは正々堂々と戦いたいと思います。そうでなければ他の債権者に申し訳が立ちません。そのために破産になるのであればやむを得ません。顧問の先生からは『3,000万円のうちの一部を事務所で負担するから和解すべき』とも言われましが、一緒に戦ってもらえないのが残念でなりません」と悔しさをにじませる。
追加弁済が流れた8月初旬、福岡銀行側の藤原弁護士を交えた話し合いももたれたが合意には至らず、黒木氏陣営の混乱は日を追うごとに深まっていった。
【田口 芳州】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら