<急転直下、そして...>
黒木氏が各所に相談を持ちかけた8月半ば、弊社報道によって福岡銀行の行為が表面化した。ディックスクロキの債権者は280余名。弊社には多くの問い合わせが寄せられ、報道の波紋は広がっていった。福岡銀行の対応やいかに?周囲が見守るなか、8月24日、同行は「他の一般債権者の利益等に配慮して」ディックスクロキに対する損害賠償請求権を行使しないとの通知を出し、同時にこれを前提とした和解話も消えることとなる。阻むものは既に無い。ここに至り、日程は9月21日、弁済額は予定通り5.1%の追加弁済がなされることとなった。
しかし、それでも疑問は残る。ひとつは、なぜ福岡銀行が先のような無理筋の請求をしたのかについてである。ディックスクロキの取引行は福岡銀行だけではなかったが、他行からは同様の話は聞こえてこない。「経営者に暴走の兆しがあれば、例え大口融資が見込めようとも諌めるのが我々の仕事です」と、行員は自行のモラルの高さに胸を張り、それ故に顧客からの信頼も厚い福岡銀行。一部では「サービサーの担当部門と黒木氏との折り合いが悪かった」との話も聞かれるが、福岡銀行からは「個別の事案についてはお答えしかねる」との返事があるばかりだ。仮に一部の人間の個人的感情が事件の背後にあるのだとすれば、それはまさに獅子身中の虫というべき存在ではなかろうか。
今回の件では、重要な役目を果たした双方の弁護士の動きもクローズアップしてきた。相手方弁護士にまでプレッシャーをかける藤原弁護士の手法は、地場の大御所弁護士に言わせると「品が無い」との評価だ。しかし、業界の既成概念にとらわれない強さの裏返しとも評価できよう。逆に、そのような攻勢を掛けられる側の弱さが際立ってくるようにも感じられる。黒木氏にしても、最後には東京の弁護士に相談しており、これでは福岡の弁護士の立つ瀬がない。顧客からの絶対的信頼を勝ち得るには至らず、東京の弁護士からはなめられている地場弁護士業界の現状が透けて見える。県弁護士会の会合では、今後は中小企業のサポートに力を入れていこうとの方針が示されたと聞く。福岡の中小企業を守り導く立場として、毅然とした態度で立ち向かう姿勢が求められる。
【田口 芳州】
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