劉 剛
9月中旬、中国国家統計局が2010年8月のCPI(消費者物価指数)を発表しました。前年同月比で3.5%増、22ヵ月ぶりの記録更新です。それでは、この数字がどんな意味を持つのか説明します。
<貯金は損になる>
データでは、昨年(09年)末からCPIの上昇が続き今年(10年)2月に2.7%となり、1年定期貯金の利率を超えました。今回の3.5%という数字は、さらに3年定期貯金利率を上回り、事実上、貯金利率が7ヵ月連続でマイナスに転じました。
今、中国内の1年定期貯金利率は2.25%であり、それから3.5%のCPIを引かれると、マイナス1.25%になります。すなわち、1万人民元(約13万円)の貯金を銀行に置いて、1年後に引き出せば、実質125元(約1,625円)の損失です。言い換えると、1万元の購買力が1年後、9,875元に相当するということです。
「物価が緩やかに上がり続けながら、政府が低金利政策を維持すれば、マイナスの貯金利率になる可能性が非常に大きい」と、あるエコノミストは指摘しています。
<物件価格上昇を誘発可能>
実質貯金利率がマイナスになることによって、国民が個人資産配置を改めて考えることになり、インフレ予測の固めることや不動産投資の拡大などにつながりやすくなります。
中国社会科学研究院のある専門家は、「07年7月にCPIが5%台超、8月に6.5%のピークを迎えた。それとともに国民の間でマイナス貯金利率に対する心配が日増しに高まり、株式や不動産に関する投資ブームを引き起こした。7月から8月までの2ヵ月間は、株式市場がそれぞれ17%、16.7%という上昇を見せた。物件価格もうなぎのぼりの激変動を呈した」と、過去の例を引き合いに出しています。
「劉翔には負けていいけど、とにかくCPIに負けてはいけない」とは、当時、庶民の間の流行語でした。「劉翔」は中国のスポーツ選手で、04年アテネオリンピック男子110mハードル金メダリストです。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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