劉 剛
<貯金争奪に迫られる銀行>
CPIの上昇に伴い、銀行貯金の魅力がだんだん薄くなっている。貯金額の減少が現れ始めている。7月の上海の銀行統計によると、4大国営銀行の貯金の伸びが去年(2009年)同時期より29.9億元減少した一方で、ほかの中小銀行は貯金総額が去年同時期より417.9億元も多く減っていました。
全国の数字を見ますと、7月末までの貸付累計金額は6月末より0.2ポイント高まっていますが、貯金のほうは0.5ポイントを下回っています。あるいは、貸付に対して、貯金不足になっています。
貯金が銀行の基本ですから、貯金を吸い込むために、各銀行が色んな工夫をし、貯金争奪の時代に突入しています。特に、大口貯金に対し、銀行側が家庭保険や買い物券など様々なプレゼントを用意しています。
<難局に直面する政府>
マイナス貯金利率について、国内は主にふたつの意見が分かれています。
(1)利率上げ派
穏やかな経済成長や速い物価上昇水準から、貯金利率を上げることによって、国民に貯金に関する安心感を与える。貯金が経済と共に成長するので、株式や不動産投資に転じるプレシャーを軽減できると、ある専門家がそのメリットを指摘。
貯金利率を上げる一方、貸付利率がそのまま。企業に対する影響を最小限に抑える。当然ながら、銀行の利益が縮小するが、上半期の儲けから耐えられるとの予測。
(2)見送り派
利上げは、マクロ経済情勢や通貨流動性を総合的に考慮してこその決定。CPIの上昇と直接に結びつくことがない。今、経済も下降する危機があり、CPIが年末に向け、自然に落ちる可能性が出てくる。
さらに、CPIの変動は市場の供給と需要から決められ、利上げをしても、すぐに需給バランスが取れるわけにはいかないとの分析。
経済の安定的な発展、経済構造改革の推進、インフレの管理などにつながりながら、個人や企業や銀行など多方面に関わる問題だけに、利率調整はどうするか、政府の手腕が問われています。
<庶民の選択、まだ貯金するの?>
1978年より、改革開放政策が実施されてきた30年間余り、長期的に見れば、人民元切り下げの一方通行です。ある投資ファンドの専門家は、現在の100万元が78年の15万元に相当するとしています。
庶民は、手元のお金をどうすれば、その価値を保ち、あるいは上げることができるでしょうか。「ゴールド(金)または株式を買う」と同専門家は勧めています。過去20年間で、ゴールドや上海株式総合指数がそれぞれ5倍や24倍の上昇になったとの試算に基づくものです。しかし、過去は過去。今後も必ずそうなるか、誰でも断定できないでしょう。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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