26日、名古屋市議会リコールの活動期限がいよいよ迫った。活動初日から毎日稼動し、多くの市民にその場所が周知されている中区栄の中日ビル前バスターミナル付近にある署名会場には、駆け込みで署名を行なう市民が断続的に訪れていた。
15 時ごろ、市民ボランティアの動きがあわただしくなった。署名会場から100メートルほど離れた三越デパート前で、市議会議員によるリコール反対演説が始まったのである。これまでの経験上、市議会が演説を行なうと署名量が加速的に増えるとのこと。人員を割いて、周辺に広く展開するという。
この日、「河村市政の真実を伝えたい」として、反対演説を行なったのは、名古屋市議会の1年生議員。民主、自民、公明、共産と党派を超えて集結した。各議員の演説で共通していたのは、市民税10%削減の財源である。「名古屋市の財政は減税できる状況でない。200億の追加の借金をしながらも減税し、子どもたちに借金を残すべきか。政策のない減税に明日はない」(丹羽ひろし議員・自民)。
「市長選挙で何度も訴えていた『金持ち減税ゼロ』(金持ちは減税対象にしない)はどうなったのか。その民意はどこにいったのか」(高吉英樹議員・民主)。「金持ち減税を続ければ借金は増える」(榑松[くれまつ]順子議員・共産)と、市民税の一律10%削減を批判する声もあがった。
これらの点に関しては、河村市長は「いろんな人がウソこいとるけど、(減税の)財源は行財政改革(公務員人件費の1割カット)で作った。起債はない」との主張をしており、「金持ち減税ゼロ」については、「そもそも市長は、税制(市民税)は平等であるべきと考えている」という。
一方で、「ひとりひとりの議員が心を改めて、良い議員はもっと力を込めて市民のなかへ入っていく。これが本当の議会改革だ」(田辺雄一議員・公明)。「市民税10%削減、地域委員会そのものは反対ではないが、議論を進めるべき」「市長と市議会、お互いに手を結んでいけば素晴らしい名古屋市政になる」(岩本たかひろ議員・自民)など、市長と市議会、それぞれの政治姿勢について演説をする議員もいた。
なお、取材した市民からは「市議会議員は、署名が15万名を超えた時点で選挙準備を始めている」との声があった。また、反対演説中、議員報酬について批判の野次を飛ばした人物と市議会の支持者が衝突する場面も見られた。
河村市長は、16時頃、栄の署名会場に現れた。「今回の場合は民意で解散する。解散するかどうかも住民投票で行なわれる。テーマは、市民税10%減税もずっと続けるか、1年だけでやめるか、議員報酬を市民並の給与にするか、今みたいに1,630万にするか、市民が判断するもの。議会は市民税のときに公聴会でも開きましたか。こんなことやったら衆議院なら解散になる。ところが市長に解散権はない、解散権は市民にある。リコールやっとるのは膨大な数の市民のみなさんです。ワシもお礼ばかり言わなあかん。名古屋の道を下ばっかり見て歩かなあかん。『ありがとう、ありがとう』って...」との演説を行なった。
また、改めて「市長選の争点、1丁目1番地は市民税10%削減だった」「マスコミの世論調査で7割の支持がある」「民意を実現するのが民主主義」「民意は天に通じる。絶対勝ちましょう」と述べ、公約実現の重要性を強調した。
演説後、河村市長は、愛用の自転車で周辺を走行し、市民へ署名への協力を呼びかけた。思わぬ市長の出現に、行き合う市民は次々に写真を撮ったり、握手を求めたりした。
名古屋市民ははたしてどのような結論を下すのか。街頭におけるリコール署名受付は27日まで。その後、各受任者が預かっている署名簿を回収した後、市の選挙管理委員会へ提出する予定である。
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