期間中最後の日曜日ということもあり、26日は市民ボランティアにも力が入った。請求代表人のひとり佐橋雅元さんは非番だったが、心配で様子を見に来た。しかし、そのまま署名簿をもって近隣で行なわれていたイベント会場へ向かった。残すところあとわずか、居ても立ってもいられないという心境だ。
国会議員時代から河村たかし市長を応援する佐橋さんは、「新しいことをどんどんやっていく人」と、河村市長を評価する。「自転車街宣もNPO法案も河村さんが始めた。ちょっと強引なところがあるかもしれんが、こういう人じゃないと改革はできない」という。
その佐橋さんもこれまでの運動を通じて、リコールの困難さを実感していた。「1枚1枚請求代表人が印鑑を押さんといかんから署名簿作るのに、100枚で1時間かかるんですわ。1,000枚やるのに10時間。まとめて印鑑押せる道具を作って、だいぶ要領よくなったけどね」(佐橋さん)。1枚の署名簿に署名できるのは同一区の12名のみ。40万の署名を目標とする場合、単純に割っても約3万3千枚が必要。もちろんそれ以上の枚数の署名簿が作成されたという。
また、区別に署名を集めなければならない現行のリコール制度では、区を問わず署名を集められる請求代表人を多く揃えたほうがいいように思える。しかし、今回は署名簿作成の手間を考えて10人に止めることとした。その10人で広大な名古屋市に点在する署名受付窓口を巡回しなければならない。覚悟の上での決断だった。
河村たかし事務所のスタッフ、小木曽 新さんは中区栄で方々に散らばる市民ボランティアの連絡役として飛び回っていた。今までのリコール活動を振り返り、「みんなが初めての経験。現場と事務所で意見の衝突があるなど苦労もあったが、全体的に楽しみにしていた人が多かった。ひとつひとつ段階を踏むなかで、みんなのなかに一体感が生まれていった」と感慨深げに語った。
ずっと携わっていた中区栄の署名受付会場も「最初は4人ぐらいしかいなかったけど、今では10人のボランティアが集まってくれています。河村市長はすごい」という。小曾木さんは、河村市長の影響力が市民ボランティアという民意となって返ってくる様子を目の当たりにしてきた。
活動期限まで残り1日、ラストスパートをかけるべく、「その後押しに」と、河村市長による元祖・自転車街宣が始まった。そのすぐ横をぴったりと付けて走りながら、小曾木さんは「あと1日になりました。署名への協力をお願いします!」と、何度も大声を張り上げた。
河村市長は26日の街頭演説で「民意は天に通じる」と力強く言った。集まった署名が必要数の約36万6千人を超えたかどうか。それは、市選挙管理委員会のチェックを終えてみなければわからない。だが、人口約226万の名古屋市におけるリコールという途方もない挑戦を成し遂げた原動力が『民意』であることは間違いないだろう。
【山下 康太】
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