劉 剛
<中国富豪の慈善寄付の現状>
四川大震災があり、慈善寄付が特に莫大になった2008年を除き、各年度の状況を見ますと、企業寄付が多数を占めています。07年や09年で、企業寄付がそれぞれ全体の61%と58.8%を占め、しかも、そのなかで民間企業が大半であることから、富豪が慈善寄付の「主力」であることがうかがえます。
国内富豪の慈善事業への参入は近年、以下の特徴を示しています。
(1) 参加人数が増え続いている
(2) 寄付金額が増え続いている
(3) 寄付方式が日常化している
企業別で見ると、民間企業が国営企業より、国営企業が外資系企業より、それぞれ多く寄付していました。マクドナルド、Nestlé(ネスレ)、カルフル、IBMなど大手外資系企業こそ、もうけている利益と比べものにならないほど、寄付にケチであることが調査で分かりました。
中国の企業家富豪の間には、アメリカより「勧められる」ことに「必要なし」との見方が広まっているそうです。
<慈善寄付が直面する課題>
(1)世論からの厳しいプレシャー
「慈善寄付するかどうかは、道徳判断のレベルまで取り上げられる」とのことで、沈黙が最善の答えになるかもしれません。
これから、中国でより多くの慈善家を育てるためには、客観的かつ積極的な世論形成が欠かせません。法律を遵守し、富豪になる人を尊敬し、彼らの慈善行動を奨励しなければいけない環境作りが目前のポイントです。寄付するかどうか、いくら寄付するかといったことは、個人の自由もあり、各人を比較して、その一部を責めることは不適切です。要するに、寄付者に対し、「寛容、理解、激励」の雰囲気を作り上げるのは大切です。
(2)慈善寄付に関する法例や組織の整備
福建省にある上場硝子会社の社長が70%の持ち株を元にして慈善ファンドを設立するつもりです。しかし、証券監督署など政府機関の一連の規定があって、簡単にできそうにありません。
一方、国内の慈善組織が今まで2,000カ所に止まり、アメリカの100万カ所以上より、遥かに足りない気がします。専門的な知識や透明な運営方法などを備える慈善組織が速やかかつ健やかに成長することが期待されています。
その一方で、「健全な慈善法律や有効な社会監督システムが出来上がるまで、長い道のりがある」と、赤十字関係者は未来を展望しています。
【劉 剛(りゅう ごう)氏 略歴】
1973年12月生まれ。中国上海出身。上海の大学を経て、96年に地元の人材派遣会社に入社。10年3月より福岡に常駐。趣味は読書。
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