小沢氏は1日に発表した政権政策のなかで、「全国の高速道路を速やかに完成させる」「子ども手当は満額の月額2万6,000円を支給する」「学校・病院の耐震化をはじめとする景気対策を実施する」などを掲げ、自民党旧田中派に由来する公共事業万能論と民主党のバラマキ策を羅列した。発想は古く、野放図な財政膨張策である。「これでは受けない」といくつかの助言をしてきたのが、田村氏らブレーン集団だった。
小沢氏は記者会見のなかで「財源については国の資産がかなりある。600兆円といわれているが、そのうちの200兆円は証券化することもできる」と、政府資産を証券化で売却する案を紹介している。円高対策では「海外資源への投資など単なる円売り介入ではない、いろんなかたちでの介入策がありうる」とも発言している。さらに小沢氏側近によれば、政府系投資ファンドの創設や公務員制度改革なども検討しているという。
このうち政府資産の圧縮は、みんなの党が先の参院選で掲げていた政策である。これまで米国債をひたすら買い続けるしかなかったドル買いの為替介入手法の多様化も、渡辺喜美氏が金融担当相時代に彼の肝いりで設けられたプロジェクトチームが提言したことがある。公務員制度改革はみんなの党の十八番だ。
小沢発言に驚いたのは、みんなの党側だった。「うちの政策が横取りされているのでビックリしました」と同党関係者は語る。ただし、もともと古い発想の政治家の小沢氏に、新しい知恵を振り付けても限界はあるようだ。「ちょっと生煮え感がある。スイートスポットに当たりそうで当たっていない」とは、みんなの党の有力なブレーンである高橋洋一・嘉悦大教授の弁だ。
「政府資産の証券化による売却を、財源論として言うのはちょっとずれています。資産と負債はバランスシート上、両建てになっています。つまり資産を減らせば負債も減るので、新たな財源にはなりにくい。むしろ政府資産の圧縮というのは、JTなど官営企業の株式売却や特殊法人の民営化などによって『小さな政府』を目指すことに眼目があります」、
高橋氏はそう見る。
代表選ではやや劣勢の小沢氏だが、彼はかつて細川政権の後継政権として自民党の総裁候補だった渡辺美智雄氏を担ぐ力業を発揮しようとしたことがある。結局、羽田孜元首相を小沢氏が抑えつけられなかったことや最終局面で小沢氏と渡辺美智雄氏の意思疎通が十分でなかったことなどで不首尾に終わった。仮に小沢氏が代表選に勝てなかった場合、菅政権を揺さぶる材料として自身は退いて渡辺喜美氏を押し立てる方策もあり得よう。喜美氏は「小沢さんと連携することはありえない」と言ってはいるが、永田町ではそんな観測がもっぱらだ。
【尾山 大将】
*記事へのご意見はこちら