一昨年あたりから一部メディアの俎上にのぼり始めたのが、外国資本による日本の土地買収。それも投資目的が明白な都市部ではなく、離島や片田舎のゴルフ場、あるいは山林だ。とくに目立つのが、中国資本による森林買収の噂。林野庁の調査を機にその一端が明らかになりつつあるが、安全保障的観点からはさらなる精査が必要だ。
<這い寄る外資の影>
9月7日、NHKの『クローズアップ現代』(平日午後7時30分)が、「外資が狙う森林・目的は?」を放送した。世界的な水資源争奪、森林を保有することによるCO2排出権確保、将来ビジネスとしての生態系サービスなどを背景に、外資による森林買収の現状と問題点をとりあえずうまくまとめていたが、何かが欠けているような印象が拭えない。
外資による都市部での投資目的とは異なる土地買収の噂が出たのは、筆者が知る限りでは日本がバブル崩壊した数年後の1990年代後半。「北海道南部で原野を物色している人物がいるそうだ。バックは外資ではないか」という漠とした情報だった。当時は米クリントン政権の金融戦略のもと、国際金融資本が日本の腐肉を漁ろうと虎視眈々。山一証券や北海道拓殖銀行などの銀行、証券が最初のターゲットになったのは周知の通りだ。
しかし、欧米の大資本は金融だけではなく、食糧やエネルギーなど実体経済分野でも世界戦略を強化しつつあり、外資による道南の原野買いが事実なら、サハリンの石油ガス開発を視野に入れた石油備蓄基地、あるいはカーギルに代表される穀物メジャーの穀物備蓄、精製基地などが想定された。が、それらは具体的な動きには至らず、外資の土地買収説も噂のまま消えた。それが実態として現れてきたのは、2000年代からのゴルフ場買収だ。
バブル期は、自治体までもがゴルフ場開発に狂奔。挙げ句は全国で経営破綻するゴルフ場が続出。それを二束三文で買い叩いたのが欧米系金融資本。彼らは土地そのものへの執着より都市部の不動産同様、経営的に再生させたり、さらに転売するなどきわめてビジネスライク。仕入れ価がタダ同然なら、プレイ代を安くしても利益は出せる。そんな外資のゴルフ場買収の様相が変わったのは3~4年前からである。
恩田 勝亘【おんだ・かつのぶ】
1943年生まれ。67年より女性誌や雑誌のライター。71年より『週刊現代』記者として長年スクープを連発。2007年からはフリーに転じ、政治・経済・社会問題とテーマは幅広い。チェルノブイリ原子力発電所現地特派員レポートなどで健筆を振るっている。著書に『東京電力・帝国の暗黒』(七つ森書館)、『原発に子孫の命は売れない―舛倉隆と棚塩原発反対同盟23年の闘い』(七つ森書館)、『仏教の格言』(KKベストセラーズ)、『日本に君臨するもの』(主婦の友社―共著)など。
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