かつてのビジネスモデルは崩壊

　福岡にて産声を上げ、「サラリーマンでもアパートのオーナーになれる」を謳い文句に上場も果たし、一時は飛ぶ鳥を落とす勢いを見せていた（株）シノケングループ。しかし、同時期に不動産業界で上場したディックスクロキが倒れ、アパマンも四苦八苦の状態が続いている。同社も不動産不況という荒波に大きく経営を揺るがされている。このような状況で、どのように生き残っていこうとしているのだろうか。現状と展望について考察したい。

＜過去の勢いは見られず＞

　（株）シノケングループ（以下シノケン）は現代表の篠原英明氏により、1990年６月に（株）日興工務店として設立された。「サラリーマンでもアパートのオーナーになれる」システムで成長を遂げ、02年12月、ジャスダック上場を果たし、順風満帆な経営が続くかと思われていた。
　しかし、05年11月、姉歯秀次による構造計算書偽装事件が発生し、皮肉なことにこれを機に同社の名前は世に広く知られることとなった。この事件により、偽装マンションを解体せざるを得なくなり資金調達は困難を極めたが、当時のメインバンクだった福岡銀行の融資によりこの局面は何とか回避することはできた。
　だが、これまで順調な業績を続けてきた同社は、この事件によって企業価値を大きく毀損することとなってしまう。これにより、在庫の増大、それにともなう借入金の増加、株価の下落が顕著となってしまった。この事件が同社にとっての大きなターニングポイントとなったことは、周知の事実である。
　その状況を打破するかのように、上海に100％子会社を設立するなど海外事業にも進出、さらにはホテル事業も展開するなど業容の拡大を行なっている。そして、07年10月にそれまでの（株）シノケンから現商号へと変更し、シノケングループを吸収分割の方法により持株会社とする現体制へ移行した。
　現在の同社グループの主事業は、（1）「不動産販売事業」、（2）「不動産賃貸管理業」、（3）「ファイナンス事業」、（4）「その他の事業（LPガス供給販売事業、飲食店経営など）」の４区分に分けられる。
　まず「不動産販売事業」は、グループの中核である（株）シノケンによる個人投資家に対するアパート販売事業およびマンションの一棟売り、（株）日商ハーモニーによる投資用マンション販売事業である。次に「不動産賃貸管理業」は、（株）シノケンファシリティーズによる賃貸住宅入居者募集、家賃回収などの事業。「ファイナンス事業」は、（株）SG・コミュニケーションズが（株）シノケンの物件を購入した顧客に対する購入資金の融資や家賃保証などを行なうもので、「その他の事業」は、（株）エスケーエナジー、子会社の（株）エスケーエナジー名古屋と（株）エスケーエナジー東京によるLPガス供給販売事業のほか、シノケンによる飲食店経営などとなっている。
　同社の09年12月期の売上高は、119億8,208万円。そのうち中核を担う「不動産販売事業」の実績は約95億円と、全体の売上高の８割程度を占める。09年12月期は、事業年度である毎年４月１日から翌年３月31日までが基幹事業の季節的な要因で、毎年下期（10月から翌年３月）が繁忙期と重なって収益計上も下期に偏重しがちとなっていたため、期間収益の平準化を図るとともに決算業務を円滑に進捗させるため、決算期を３月31日から12月31日に変更している。これによって９カ月の変則決算となっているため、前年（09年３月期）との単純比較はできないが、とくにシノケンのアパート販売（低層賃貸住宅）の分野では大幅な落ち込みが見られる。

【神田　将秀】

［COMPANY INFORMATION］
（株）シノケングループ
代　表：篠原　英明
所在地：福岡市博多区博多駅南1-15-22
設　立：1990年６月
資本金：22億2,215万円
年　商：（09/12）119億8,208万円

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