かつてのビジネスモデルは崩壊

＜木造アパート苦戦　それに代わるものとは＞

　同社の木造アパートは、前年実績108件（60億8,165万円）に対し、09年12月期は34件（18億3,731万円）と激減している。これについて同社は、「不動産市況の低迷から新規開発を抑え、在庫解消に徹したためだ」としている。実際に、連結貸借対照表の資産・販売用不動産の項目を見ても、76億9,475万円から22億5,778万円に減少している。
　同社の基盤を築いてきた低層アパートであるが、この部分の不振を何でカバーしようとしているのか。それはRC建物、そしてワンルームマンション販売である。子会社である日商ハーモニー（主に東京にて展開）の投資用マンション販売（高層住宅販売）は、前年実績108件（22億7,122万円）に対し、09年12月期は224件（49億929万円）と大幅に増加している。これは、東京の不動産市況が上向きな状況もあると言えるが、結果としてシノケンの不振を日商ハーモニーが補うかたちとなっている。

＜えんとの資本・業務提携＞

　09年12月、同社は（株）えん（以下、えん社）との資本・業務提携に合意し、締結している。10年１月には、えん社が新たに発行した普通株式70株を1億1,760万円で引き受け、また既存株主よりえん社の発行済株式総数580株のうち150株を２億5,200万円で譲渡されたことにより、同社はえん社株式を33.3%所有することとなった。　
　東京市場ではグループ会社の日商ハーモニーが営業展開を実施しているが、地元福岡においての営業展開が同社のかねてよりの課題であった。それを大きくカバーしていく意味合いがこの提携話には込められている。
　以前より両社の取引実績は存在したものの、篠原代表とえん社の原田代表は表立った関係構築はなかったようだが、定期的に会って情報交換など行なっていたという。09年の夏頃、今回の提携話が浮上し、両社代表が極秘のもと水面下で進めていたという。
　同社によると、「同じ地元発の不動産業として、お互い持つ力を提供しあって事業を作り上げる意向で、良好な関係構築をしていきたい」とのことのようだ。人的な交流は現在のところ予定はないが、今後に関して同社側は「将来的にはあるかもしれない」と否定はしていない。
　この提携話については、えん社より同社が望んだ提携話であることが推察される。まず、両社とも福岡発祥で不動産事業を手掛けており、投資用マンション販売事業を始めとして、不動産の売買や仲介斡旋、不動産賃貸管理事業などビジネスモデルに共通点も多く、両社の持つ経営資源を共有化することで相互にシナジー効果を発揮しうるビジネスパートナーとなり得るということ。次に、経営資源の相互活用により、付加価値が高く専門性に優れたサービスを提供することで昨今の不動産不況および経済環境の急激な変化に対応することが可能となると判断し、両社の安定的な業績の確保と企業価値の向上が図れること。この２点が大きな目的とされる。
　今回の提携により、当然ながら同社の福岡都市圏での業績は以前より上昇することが予想される。具体的数値については現状では未知数であるが、現在、かたちとして少しずつ現れてきている。具体的には、８月末現在で、福岡では4物件の開発が進行中である。場所は中央区港、中央区六本松、博多区神屋町、博多区対馬小路で、デベロッパーがシノケン、販社がえん社、施工がNISグループの池田建設（株）の予定である。年内の着工はこの４物件で、うち港、六本松、神屋町の竣工は来春３～４月を予定している。
　もともと低層木造アパートで実績を重ねてきた同社であるが、前述した通り需要が低調なため、今回の提携話は、会社として「RC建物・ワンルームマンション事業強化へと大きな方向転換を図っていく」というメッセージと言えるだろう。

【神田　将秀】

［COMPANY INFORMATION］
（株）シノケングループ
代　表：篠原　英明
所在地：福岡市博多区博多駅南1-15-22
設　立：1990年６月
資本金：22億2,215万円
年　商：（09/12）119億8,208万円

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