かつてのビジネスモデルは崩壊
<財務内容は最悪期を脱しつつあるのか>
同社の財務内容は、09年3月期に続き09年12月期も大幅赤字を計上している。それらが要因で、自己資本比率は19.7%から5.5%、さらには4.9%と低下。借入依存率は67.7%から84.1%と、月商換算では11.87カ月とかなり重い負担へと上昇している。新規案件が少なかったこともあり、負債額は175億7,336万円から134億119万円に圧縮されている。同時に、在庫である販売用不動産も35億7,324万円から12億4,094万円と、大幅な減少を見せている。収益面では、第2四半期までに前期の評価損物件の売却が完了したこともあり、売上総利益率は6.3%から12.3%に上昇している。
10年12月期連結(第2四半期)の売上高は87億1,234万円、粗利益17億3,784万円、営業利益は6億2,147万円、経常利益は4億1,298万円、純利益は1億8,736万円となった。前年同期と比較して、売上高は3億1,786万円減少している。一方で、粗利益は前年同期から9億4,381万円増加し、全体的な利益率の改善に大きく貢献している。これは、経営合理化の一環で、原価・仕入の見直しや固定費の削減など実施した成果であると思われる。また、同社では9月に10年12月期の業績予想を、売上高で165億円から185億円へ、経常利益で4億円から8億円へと上方修正している。これが2期連続赤字からのV字回復の布石となるのだろうか。
<不安視される日本振興銀行の存在>
たしかに、直近の財務内容に関しては改善傾向を示している。しかし、不安材料がないわけではない。最も不安視されるのは、資金調達面だ。
シノケンの借入額ナンバーワンの銀行は、9月に破綻した日本振興銀行(以下、振興銀)である。とはいえ、シノケンと振興銀の取引は長いものではない。融資取引が始まったのは昨年7月である。その5カ月後の12月末時点で、全体の借入残高は119億円あった。そのうち45億円が振興銀の融資残高である。そして今年6月段階では、総借入金129億円のうち74億円と、シェアにして実に57%にまで膨らんでいる。これは、通常の融資取引を行なう銀行であれば、とても考えられない比率の伸びである。その反面、かつてのメイン銀行である福岡銀行などは、着実に融資量を落としている。融資シェア50%を超える銀行の破綻が、同社に何の影響も与えないということはまず考えにくい。
同社役員は振興銀について、「メイン銀行という考え方はない。数多くの金融機関のなかのひとつとして捉えているし、苦しい時期に融資をしてくれたという恩義も当然持っている。今後については、今まで取引を行なってきた金融機関などからの資金調達により、円滑な事業運営が図れると考えている」と言う。
貸出金を伸ばさねばならなかった振興銀の状況と、シノケンの資金需要がうまく噛み合い、このような異常とも言うべき融資量の変化をもたらしたということだろう。しかし、この状況下で、再度メインバンクを選定して信頼関係を構築していくことはたやすいことではない。現在、シノケンの筆頭株主は、NISグループの子会社エヌ・アイ・ストラテジック・パートナーズ(株)が業務執行組合員をつとめるNISバリューアップ・ファンド2号投資事業組合(以下NIS組合)。日本振興銀行との繋がりが非常に深いNISグループが筆頭株主かつ親会社となっていたことで、古くから取引がある福岡銀行などは非常に難色を示していた様子である。しかし、NIS組合の保有する株式の一部を、同社代表および同社グループ役員に譲渡している(NIS組合株式保有率:移動前・54.13%、移動後・49.97%)。これにより、NIS組合は同社の親会社から、その他の関係会社に該当することになった。同社役員によると、最終的にはNIS組合の持株数はなくなる見込みであるという。振興銀の破綻によるイメージ的なものや、銀行対応という意味合いが強いと思われる。
このように、先手を打つかのごとく振興銀との距離を開き、他銀行へのアピールとも考えられる行動に、同社の資金調達に対する危機感が現れていると言ってよいだろう。この状況をどのように打破していくのかが、シノケンにとって近々の大きな課題のひとつであると言える。
<今回の危機をどう乗り切るのか>
当初のビジネスモデルが崩壊し、取り巻く状況が激変していくなか、同社は当初の木造アパートからRC建築、ワンルームマンションと、主要事業形態を変化させてきている。しかし、現在同社の置かれている状況は、かつて経験したことのないほど厳しいものになると言わざるを得ない。今まで数々の経営の危機に直面してきた同社が、今後どのような舵取りを行なっていくのか注目しておきたい。
【神田 将秀】
[COMPANY INFORMATION]
(株)シノケングループ
代 表:篠原 英明
所在地:福岡市博多区博多駅南1-15-22
設 立:1990年6月
資本金:22億2,215万円
年 商:(09/12)119億8,208万円
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