派遣コンパニオンに限らず、正規雇用の従業員も不景気の影響を受けている。このところ店側の人員の『調整』に拍車がかかっているとの話を聞いた。
今、『調整』されているのは、接客態度が悪いとか、売上が極端に少ないといったコンパニオンではない。従業員として申し分ないが、店の経営上、泣く泣く辞めてもらうというのが実態だ。その場合、はっきりと「クビ」とは言われない。出勤日を減らしていき、自ら退店を申し出るようにもっていく。
最近、店を変えたあるコンパニオンは、「前の店で出勤が週3日になり、とてもじゃないが生活できなくなり、店を辞めた」と実情を語った。「きょうは同伴ある? なければ来なくてもいいよ」と、出勤直前に電話で休みを促すような店もあるという。
当然のことだが、出勤日数が減れば稼ぎも減る。派遣同様、正規従業員でも副業を行なうケースが増えている。もっぱら昼に仕事をすることが多いが、中洲1本でやっているコンパニオンのなかには、他の店に客を連れて行くことで売上の一部をもらい、収入の足しにしている女性も少なくはない。
「同伴やアフターで、別の店にお客さんを連れて行けば、その売上の2割から3割をもらうことができます。その後、紹介したお客さんが自分でその店に飲みに行っても、その度に同じような歩合でお金をもらえるんです」とは、事情通コンパニオンの話。
もし、お気に入りの女の子が、「すごくいい店があるから一緒に行こうよ」と誘ってきたら、歩合をもらっている可能性が高いと考えていいだろう。
ただし、紹介された先がボッタクリ店だったというケースは聞かないのでご安心を。他の店のコンパニオンに紹介料を払う店は、少しでも集客を上げたいと考えている店だ。
そういう店はなおさら、雇いたくても従業員を雇えない。派遣コンパニオン代も馬鹿にならないうえに、利用回数という実績がないため、人気のあるコンパニオンはまず派遣されてこない。利益を落としてでも他の店のコンパニオンに頼るのは、自然の成り行きかもしれない。こうした店とコンパニオンの共生関係は、今後も進んでいくだろう。今、それぞれの営業センスが厳しく問われている。
余談だが、小生の行きつけの店にいた女の子が、9月いっぱいで退店した。本人と店に聞いたところ、カナダに1年間留学するためで、来年また復帰するという。厳しい環境で中洲を去るコンパニオンが多いなか、自分の夢を叶える子もいるのだ。
長丘 萬月(ながおか まんげつ)
1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。
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