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大倉マン奮闘記・英国編(2)~暗躍するフィクサー、戦時下のイランで
経済小説
2010年10月 7日 14:39
前回までのあらすじ
 1年の西ドイツ支店勤務を経て、1983年に日本企業初の海外支店である英国・ロンドン支店へ転勤となった御厨。海外放浪時代に滞留した思い出の地で、世界を股にかけるビッグ・ビジネスに着手しようとしていた。

<イラン・ビジネスの再構築>

 御厨は、ロンドン支店でエネルギー関連、産業機械、航空機、製鉄関係など多岐に渡る仕事に携わった。出張先もスウェーデンをはじめとする北欧諸国、アラブ、イタリア、ギリシャ、スペインと多方面におよんだ。そのなかでも心に残っているのは、イラクとの戦争中にあったイランとのビジネスだという。
 1979年、イラン・イスラム革命が起こり、国王が国外脱出し王政が崩壊。一方、パリに亡命中の宗教指導者ホメイニ氏が帰国した。王政時代、大倉商事は対イランのビジネスを大規模で展開していたため、革命後、新政府により意図的に疎外されるようになった。

 ロンドン支店に赴任した御厨に課せられた任務は、イラン・ビジネスの再構築。イラン国営石油会社(NIOC)とイランガス公社(NIGC)の買付機関がロンドンにあったからだ。
 この商談は容易なものではなかった。さまざまな「フィクサー」と呼ばれる人物が暗躍。彼らを見極め、大倉商事イラン駐在員とも連絡を取りながら、慎重に事を運ばなければならない。肉体的にも精神的にも激しく消耗する仕事だった。さらに、御厨が携わっていた当時は、1980年から88年までイラン・イラク戦争が続いていたのである。

 当然、イランに出張することもあった。戦時下にあるテヘラン空港では、厳しい税関のチェックがあった。黒いカーテンがかかった小さな部屋に通され、すべての所持品が調べられた。すぐ近くには銃をもった軍人が立っていた。「とにかく怖かった。何か不審な動きでもしようものなら、直ちに撃たれそうな雰囲気だった」と、御厨は回顧する。
 イランに単身赴任していた駐在員は、過酷な滞在生活を送っていた。いつイラク空軍が爆撃をしてくるか分からない状況だけに、夜になると家の明かりを消していた。訪れた御厨は、駐在員とふたりで真っ暗闇のなか、カップ一杯のメチルアルコールにレモン汁をしぼった酒(?)を酌み交わした。飲みすぎると失明するおそれもある危険な飲み物だ。しかし、イランは宗教的に禁酒の国。そのようなものでなければ酔うことはできない。酒好きの御厨にとってはとにかく酷な場所だった。

 1985年には、約200名の在留法人がイランに取り残され、トルコ国の航空機で脱出したというエピソードもあった。そうしたさまざまな危険をくぐり抜け、大倉マンたちはイラン・ビジネスを少しずつ元に戻していったのである。

(つづく)

【文・構成:山下 康太】

<プロフィール>
御厨 幸弘 (みくりや ゆきひろ)御厨 幸弘 (みくりや ゆきひろ)
1952年9月4日佐賀県生まれ。71年、佐賀県立佐賀北高校卒。77年、東京経済大学経営学部を卒業し、大倉商事(株)へ入社。数々の海外駐在勤務を経験する。93年、同社を退社し、(株)岩田屋の子会社にあたるiDSトレーディング(株)へ入社。95年、同社を退社し、96年、(株)ミックコーポレーションを設立。現在に至る。


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