8日、福岡市役所で、11月14日投開票の福岡市長選に立候補予定の元佐賀市長・木下敏之氏(50)が記者会見を開き、選挙公約を発表した。
「すべては子どもたちのために」としたうえで、発表された「木下としゆきの政策三本柱」と称する公約の骨子は、「福岡版事業仕分けで、税金のムダ使いを削減」「地元企業を元気にする公共投資を増やす景気対策」「待機児童ゼロ、老人ホーム増設など福祉・教育を充実」の三つ。
1.「福岡版事業仕分けで、税金のムダ使いを削減」
木下氏は「大阪府方式の業務分析を元に福岡版事業仕分けを行ない、市役所のムダを削る」ことを真っ先にあげた。大阪府の業務分析とは、慶応大学総合政策学部教授の上山信一氏が開発した手法で、ある程度の分野に関連する予算をまとめ、ひとつだけを見ていくのではなく、大きなくくりとして見ていくやり方。民間で経営経験を積んだ腕の立つコンサルタントを分析のときに市職員とともに分析をさせ、民間の感覚で、他の政令市とやり方の比較をしながら評価していく。木下氏は「事業仕分けを行なううえで、最も重要なのは分析にかかっているので、この分析を役所の感覚のみで作ると上手くいかない」と話し、その重要性を説明した。
次に、市長給料を3割、議員報酬は2割、市職員の人件費を1割カットするという「3,2,1の削減」をあげた。ただし、議員報酬2割カットに関しては議会への提案というかたちに止め、議会の判断に委ねる考えだ。そのほか、「埋蔵金の発掘や天下りの廃止に取り組むこと」や、「区役所の権限を強化、住民が使いやすい区役所とすること」を公約とした。
2.「地元企業を元気にする公共投資を増やす景気対策」
「市役所の借金減らしよりも公共投資を増やす景気対策」を掲げた木下氏は、市債残高削減よりも住宅のバリアフリー化や老人ホームの増設などの公共投資を積極的に行なうことを明らかにした。これは、これまで吉田市長が行なってきた市債残高を減らす政策とは対立するものであり、木下氏の公約は大きな政策論争を呼ぶと思われる。
そのほかにも、法人住民税などの減税による日本企業や外国企業のアジア統括本部などの誘致、ウォーターフロントの再整備、天神の交通渋滞解消、市職員の地元企業に対する積極的な営業支援といった積極的な経済政策をあげた。
3.「待機児童ゼロ、老人ホーム増設など福祉・教育を充実」
木下氏は福祉政策にも力点を置く。老人ホームの定員倍増や、老朽化した市営住宅のバリアフリー化などは公共投資の一環として経済政策にも結びつく。
また、認証保育園制度を新設や60人未満の無認可保育園の認可化を行ない、待機児童をゼロにすることも公約とした。そのほか、児童相談所の充実、障害者への決め細やかな対策、予防注射などの補助の拡大など、現在の社会情勢に配慮した内容も含まれていた。
以上、三つの骨子と別に、木下氏は「約束」として、人工島事業に関するふたつの公約を打ち出した。
まず、こども病院の人工島(アイランドシティ)移転について。以前から木下氏は「市民のいのちと生活を守るため、人工島移転は中止する」こと。そして対案に「東区馬出にある九州大学医学部敷地内への移転」「現在の建物の基礎や柱を利用して新築同様に改修するリファイン建築方式を用いて、現地で建て替え」のふたつを基本的な案として示し、人工島移転は行なわず、中止することを強調した。
また、青果市場についても人工島移設は行なわず、現地建て替えを基本線としつつ、一から再協議することを約束すると公約に掲げた。
改革派市長や事業仕分け人としての実績を強調する木下氏。今後の活動を通して、その政策立案力と実現力、そして今回発表された選挙公約を福岡市民へ浸透させていくことが鍵となるだろう。
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