10月、７日の木曜日から９日の土曜日まで「中洲まつり」が催された。小生が訪れたのは８日夜。小雨がぱらつく生憎の空模様のせいか、人通りはいつもと変わらないようだった。去年までと大きく変わった点は、中洲大通りに飲食物を売るワゴンがないこと。それも影響しているのだろうか。

　「きょうはホントにヒマっすよ」と、雨を避ける意味で訪れた行きつけの店長がボヤく。ワゴンの件については、みかじめ対策という暴力団排除条例のからみだとか、先だって行なわれ大盛況だったジャズ・フェスティバルの教訓などと諸説が流布されているという。後者を補足すると、「飲食物はワゴンではなく中洲の店で」という思惑によるもの。
　ただし開催中、つねにどこかでミュージシャンが演奏を行なっているジャズ・フェスティバルの場合、その演奏を聴くことが会場を訪れる人の目的。一方の「中洲まつり」は、ワゴンで飲み食いするのを目的と考えている人が多い。出勤前にその飲み食いを楽しみにしていたという店の女の子からは「期待を裏切られた」という声も。

　店側にはまつりに便乗してイベントを企画しているところが多かった。小生が行ったスナックでは、「中洲まつり」期間中は、生ビール飲み放題。特別にビール・サーバーを設置。「きのう（７日）は４リットル、呑まれちゃいました」と、店長は苦笑いする。
　もっとも初日は、ワゴンが列をなすという去年までのイメージを抱いて、中洲を訪れた人も多く、かなりのにぎわいだったそうだ。そのにぎやかな中洲が見られなかったのは残念至極。ともかく、せっかくなので飲み放題の生ビールを頂だいすることに。

　そうしていると、店のなかまで賑やかな声が聴こえてきた。「中洲まつり」の目玉である「女みこし」の登場だ。外ではみこしを中心に、かなりの人だかりができていた。小生もカメラを持って店を飛び出す。中洲大通りでは「そいやっ、そいやっ！」という、みこしをかつぐ女性たちのかけ声が、"女のまち"としての中洲を盛り上げていた。その雰囲気を味わって欲しいと思い動画を撮ってみたので、ぜひ観てほしい。
　ところで、中洲まつりのHPによると、その正式名称は「中洲國廣女みこし」という。中洲の商売繁盛の神社である國廣神社に奉納する由緒正しいお祭りだ。

　存分に「女みこし」を見学し、しばらく放置していた店へ戻る。通りとは打って変わってガランとした店内。「もう一杯」と生ビールを頼み、乾いたのどをうるおした。
　「（生ビールは）きのうからなんですけど、だいぶ注ぐのも上手くなったんですよ」と、女の子。「きのうはすごい人がいてね、ずっと生ビール飲んでいた人がいたもんね」と、店長。さりげない言葉のやり取りに込められていた想い。それを察知した小生は、４杯目からキープのボトルに変えることにした。

長丘 萬月（ながおか まんげつ）
　1977年、福岡県生まれ。雑誌編集業を経て、2009年フリーライターへ転身。体を張った現場取材を通して、男の遊び文化を研究している。

*記事へのご意見はこちら

※記事へのご意見はこちら