福岡市長選挙の告示(31日)を目前にひかえた18日、福岡市中央区にある福岡地方裁判所で「こども病院の人工島移転用地売買代金返還請求等事件」の第2回口頭弁論が行なわれた。この裁判の原告は「福岡市こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議」の脇義重氏、被告は福岡市長となっている。福岡市立こども病院の人工島移転のための土地購入の経緯について、その過程を明らかにすること、こども病院の人工島移転用地取得に際してかかった費用を返還することを求めた住民訴訟。
今年2月25日、「福岡市こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議」が「こども病院人工島移転予定地購入に関する住民監査請求」を提出した。内容は『福岡市長及び博多港開発に対して、主に支出額全額を返還させるなど必要な措置を講じることや、福岡市が支出した公金のうち違法部分の損害を補填するために必要な措置を講ずべきことを勧告すること』を求めたが、福岡市監査委員会が「結論が出せない」と回答したため、「福岡市立こども病院の人工島移転のための土地購入の経緯について」の住民訴訟に踏み切った。
原告側は、口頭弁論で過去の経緯について説明。2006年の選挙時、吉田市長は「こども病院の人工島移転見直し」を公約に掲げていたが、当選後にこども病院の人工島移転を推進。半年前に同団体が吉田氏に抗議ならびに公開質問状を送付したところ、吉田市長が釈明書で「こども病院の人工島移転見直しは公約47項目の1項目である」と返答したと述べた。そのことについて、18日の口頭弁論の際に原告側は、市民に対して明確な説明をすることを吉田市長に求める内容の請求を行なったが、被告側の弁護士は「釈明書以上の釈明をするつもりはなく、これ以上の証拠を提出するわけではない」と反論を行なった。
裁判終了後、「福岡市こども病院の人工島移転撤回を求める市民会議」代表世話人で、今回の裁判の弁護士の羽田野節夫氏は裁判終了後、裁判を傍聴した市民に対し、「吉田市長はこども病院の人工島移転について『47項目の1項目にすぎない』と文書で返答したが、不見識極まりない。こども病院の問題を軽んじる姿勢であることは明らかだ」と吉田市長の姿勢を批判する内容の説明を行なった。
裁判を傍聴した市民からは「行政の怠慢としかいいようがない」(60代男性)との声があった。次の口頭弁論は12月20日午前10時からの予定。
ちなみに住民監査請求とは、地方自治法第242条で定めている制度で「住民が、自らの居住する地方公共団体の違法、もしくは不当な財務会計の行為があると認められる場合、その地方公共団体の監査委員に対し監査を求め、その行為に対して必要な措置を講ずべきことを請求することができる」と規定されている。ちなみに、住民訴訟を行ないたい場合は訴訟を提起する前に、この住民監査請求を必ず行なわなければならない。
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