この地で働く魅力とは 経済活性化に必要なもの
男性が要職につく福岡経済の枠組みでは、これ以上の福岡活性化は不可能ではないか--こうした考えから今回、福岡で活躍する女性経営者による座談会を企画した。今の福岡の魅力と欠けているもの、女性ならではの視点から考える福岡の活性化策について、自身の経営と関連づけて語っていただいた。
<福岡で働く理由>
安東 私は福岡天神大丸で「アントレ」というトータルビューティーサロンを営んでいます。この地で癒しを提供し続けて35年経ちました。少しでも福岡の方々に生かされた恩返しをしたいと思い、姉妹都市であるフランスのボルドーと福岡市の間で、余命いくばくもない末期ガン患者を治療する看護師さんたちがメディカルアロマを学ぶ「美容技術取得交流研修制度」を立ち上げました。
ガン治療は日本とフランスとではまったくレベルが違います。結局は医者と看護師との関係に行きつきます。向こうは両者がパートナーシップで結ばれており、フィフティーな関係です。なぜなら、患者さんにどうしてあげるのが一番良いかという本質的な部分で寄り添っているからです。日本はそうではないところもかなりあるようですが、そうした医療の現場を踏まえたうえで自分の技術を生かしたいという人を育てることが、福岡に生かされている私の役割だと思います。
それが福岡を元気にできるかどうかは分かりませんが、何もやらないよりはできることやっていこうという思いで始めました。福岡は本当に住みやすい街だと思います。もっと良いコミュニティができる街ですし、そのなかで自分が何らかのかたちで関わっているとワクワクします。
権藤 私はもともと母と一緒に、中学校に上がるまで関西で暮らしていました。母が転勤で福岡に来たとき、最初は「帰りたい」と繰り返していたのですが、「ここに家を買ってずっと住みたい」と言い出したのです。子ども心に、福岡って良いところだなと思いました。
現在では、24時間の保育所「リトルワールド」を福岡市内で3カ所営んでおります。私自身、20歳で結婚して子どもを産み、21歳で離婚を経験しました。当時は夫の借金を抱えており、子どもを育てながら借金を返さなければならず、昼夜問わず働きました。
認可保育園では預かる時間が短く日曜日は休みでしたが、私はもともと美容師だったので、日曜日が休みということはあり得ませんでした。それでも何とか子どもを育てながら1年ちょっとで借金を返済しましたが、そのような生活をしていると子どもと一緒にいられるときがほとんどなく、その時間がすごくほしいと思っていました。
あまり表には出ませんが、認可保育園に対する不満や子どもとの時間がほしい人たちはたくさんいるのかなと思い、そのとき初めて保育園をつくろうと思いました。きっと、娘がいなければこの仕事をしていなかったと思います。
実際、蓋を開けてみると、私みたいに離婚して子育てしている人もいますし、私以上にキャリアウーマンで子育てに時間がとれない人たちもたくさんいます。少しでもそういう人たちの助けになれば良いなと思っています。
松下 私は照明デザイナーをしています。25歳で独立し、29歳で株式会社をつくりました。今年で22期目になります。福岡で会社をつくろうと発起し、揺るぎなくこの地に根を下ろしながら、いろいろな国の仕事をしています。
知人からよく、なぜ東京で開業しないのかと言われます。たしかに東京の方が仕事もあって照明デザイナーとして経営するには良いのかもしれませんが、私が福岡に住んでいるのは、渋滞なく、空港が近いなどといった、自分で組み立てられる利便性からです。心の余裕というか、満員電車に乗るような生活は私には向いていませんし、東京では仕事の情報ばかり追いかけて、情報が枯渇してくると急にすごく不安に襲われて右往左往している同業者がいるのが、客観的に見ていて分かります。少し離れたほうが、どのプロジェクトにどのような人たちが関わっているかよく見えます。
ですから、ネットの時代になったときから日本中どこに居を構えても同じで、デザインの発想が一番できる場所が良いと考えています。
<参加者 プロフィール>
[COMPANY INFORMATION]
(株)アントレ
所在地:福岡市中央区天神1-4-1 大丸東館エルガーラ4階
設 立:1986年9月
資本金:1,000万円
[COMPANY INFORMATION]
(有)Branches
所在地:福岡市博多区蒲田2-2-23
設 立:2006年3月
資本金:300万円
[COMPANY INFORMATION]
(株)松下美紀照明設計事務所
所在地:福岡市早良区百道浜3-4-7-101
設 立:1989年6月
資本金:1,000万円
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