健康食品の通販市場は、九州を拠点とする健康食品通販企業が牽引している。ここ数年は参入企業増加による競争激化や、表示をめぐる法規制強化などで「官製不況」とも言われる業況にある。しかし各社は、新規アイテムの拡充をはじめ、店舗展開や海外進出などの販売チャネルの拡大で新たな活路を見出している。
健康食品は通販伸長の要因
今や生活の一部として定着しつつある通信販売。(社)日本通信販売協会の調査では、全体の売上高がここ十数年連続で増加しているという。その要因として、手軽に購入できる利便性が消費者に浸透してきたこと。また店舗以上に豊富な品揃えを構えるインターネット、テレビ通販専門チャネルの増加といった購入方法の拡大が挙げられる。さらに長引く不況下で消費者が節約志向のなか、外出せずに欲しい商品だけを自宅から購入する「巣ごもり消費」が広がったことも一因だと見られている。
日本通信販売協会の調査では、通販の年間利用率は64%。男女比率は女性のほうが高く、平均利用会社数は3.5社で平均利用額は6万2,000円、年間利用率は6.8回。約2カ月に1回利用されている計算だ。利用する媒体は、インターネットが5割以上で国内カタログが約3割を占める。このほか、テレビショッピングやダイレクトメールからの利用もある。通販各社の声では媒体や商品の特性もあり、複数の販売チャネルを利用しているという。
その通販商材で中核を担っているのが健康食品。主に疾病対策として使われている商材で、医薬品ではないものの、疾病効果的な販売や、錠剤・カプセルなど医薬品に近い形態が多いことから、約40年前に販売を禁止していた。しかし、厚生労働省が2001年に「医薬品の範囲に関する基準の改正について」(医薬発第243号)の通知により、健康食品の基準が緩和。「食品」であることを明記すれば販売が容認されることになった。
その一方で、少子高齢化社会に伴う健康ニーズが高まり、食薬区分改正によるヒット素材の登場、とくに医薬的な資格を持たなくても起業できることから参入企業が相次いだ。なかでも、健康食品通販市場を拡大させたのは九州に拠点を置く企業。やずや、エバーライフ、新日本製薬、えがお、健康家族、メディア・プライス、JIMOSなどは売上高100億円を超える有力企業だ。
九州通販企業が伸びた理由はさまざまある。通販は店舗と違い、どこに拠点を置いても全国区で販売でき、遠隔地で販売するデメリットがない。さらに九州は首都圏に比べ、人件費や地代が低コストで済むことも強みだ。また九州通販各社がそれぞれ消費者に分かり易く、かつ購入を促すような訴求ができるノウハウが豊富にあることも要因としてあるだろう。とくに健康食品は薬事法や景品表示法の関係上、直接的な効果効能を謳えないため、規制のなかで購入に結びつける表現力が必要となる。つまり、各社は「何を売るか」ではなく「どう売るか」を重視し、そこに独自の工夫を凝らしている。
その特徴的な販売法が「単品継続販売」。これはメーカーが直接アイテムを絞りこみ、ターゲット顧客を限定して継続的な購入を狙う販売手法。不況下で消費者が商品に対する選択基準がよりシビアになっていることで、あえて一素材だけをクローズアップしたワンカテゴリーブランドとして販売し、継続購入により利益を上げるのが狙い。そのため主力商材も、痩せたら継続性の低いダイエット系より、不足しがちな栄養素を継続摂取することで疾病予防や対策が期待できる美容系や免疫、関節をポイントに訴求した商品が多い。
また継続購入を促すうえで広告宣伝が必要だが、各社では「CPO」(Cost Per Order:広告宣伝費の費用対効果を示す指標)、「CPR」(Cost Per Response:見込み顧客1人或いは企業1社あたりの問い合わせや、資料請求などの成果点にかかった広告宣伝費)といったデータベースの検証を行なっている。
この分析法については、やずや、エバーライフなどの有力通販各社がいち早く導入した。消費者が手を出しやすいサンプル商品をあらゆる媒体で広告宣伝を行ない、見込み客リストを蓄積。そして巧みなアプローチで本製品を購入に結び付けるという流れ。
このデータをもとにした販売手法で、数多くの九州健食通販企業が成功を収めている。
【小山 仁】
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