この地で働く魅力とは 経済活性化に必要なもの
男性が要職につく福岡経済の枠組みでは、これ以上の福岡活性化は不可能ではないか--こうした考えから今回、福岡で活躍する女性経営者による座談会を企画した。今の福岡の魅力と欠けているもの、女性ならではの視点から考える福岡の活性化策について、自身の経営と関連づけて語っていただいた。
<足りないウェルカム性>
―自己紹介のなかでいくつか論点が出ましたが、まずは福岡の観光についてお聞きしたいと思います。松下社長は現在、JR博多駅前広場の照明なども手掛けられているということですが、この点についてはどのように考えられていますか。
松下 照明の話をするとキリがありませんが、せめて自分が住む街の夜景くらいはきれいにしたいと思っています。ただ、経済力の問題もあって、福岡はなかなか香港のようにはならないでしょう。わざわざ香港の夜景を見に行く観光客がいるくらいで、それと同じことを福岡でもすれば経済はより活性化すると思います。
安東 もう1つ、以前にJR九州の石原進会長もおっしゃっていましたが、これだけ中国からのクルーズが来るにも関わらず、1回当たりの通関手続きが2時間かかるそうなのです。これを短縮すれば、もっと観光時間が延びるはずで、たった3時間くらいで電気店やデパートだけを訪れるのではすぐに飽きられてしまいます。この場合、大宰府などはコースに入っておらず、泊まりは船のなかですから、福岡は単なるトランジットになってしまっています。
松下 要望は進化しますから、2回目は要求が高くなります。同じことを繰り返しておけば良いという傾向が強いですが、それではダメです。
安東 たしかにリピーターとしては来ないですよね。
松下 先日、中国の大連で聞いたのですが、ルイヴィトンの1日の売上が1,500万円の日があったそうです。それもほとんど中国人が買っているらしく、それだけの経済力がすでにあるそうです。また、温家宝首相は「あと10年は中国のバブルは弾けない」と言ったそうですが、今は経済発展しているのは海岸部だけですから、それが内陸に行くのにはあと10年かかるというわけです。
福岡の周りには1,000万人クラスの都市が近くに点在しているということ、その分の需要があるということをもっと意識した方が良いでしょう。
―グローバルな視点から海外の都市と福岡を比べて、「こういうところを真似すれば良いのに」などと感じられたことはありますか。
松下 福岡は港湾都市で、シンガポールや香港などと比べると、港に船が着いたときのウェルカムさがまったく違いますね。たとえばコンビナートに「WELCOME」と書いてあったり。でも福岡はそういうのすらありません。
私が一番好きなウェルカムがあったのは、アメリカのシアトルからバンクーバーに向かう途中にあるビクトリアという小さな港町です。フェリーが入ってくると入り口のきれいなホテルから従業員全員が出てきて「Welcome to Victoria!」といってダンスをしてくれるのです。本当にホスピタリティを感じましたし、小さな港町の良さを最大限生かしていたと思います。
これはもう数十年前の話ですが、そのとき「日本は絶対に敵わないな」と実感しました。
―観光は非日常を楽しみに行くことだと思いますが、福岡ではそうした場所が少ないと思います。
安東 博多港はまさにウォーターフロントのど真ん中ですが、船が停泊しているだけで何もありません。
たとえば、能古島への渡船場に少しオシャレなゲートウェイをつくって、タグボートみたいオシャレなものに乗せて「さあ、これから島に入りますよ」という雰囲気を出し、そして島の皆がお迎えをする。クリスマスシーズンにはキャンドルをセットして島に来させる。そういう仕掛けが福岡ではできるかなと思います。
松下 福岡はとくに都市部になればなるほど、日常と非日常を分けるのは難しいでしょうね。コンパクトな都市ですから。
安東 ただ、福岡から少し行けば別荘地帯の糸島半島があります。非日常が味わえる場所がすぐ近くにあるのです。
<参加者 プロフィール>
[COMPANY INFORMATION]
(株)アントレ
所在地:福岡市中央区天神1-4-1 大丸東館エルガーラ4階
設 立:1986年9月
資本金:1,000万円
[COMPANY INFORMATION]
(有)Branches
所在地:福岡市博多区蒲田2-2-23
設 立:2006年3月
資本金:300万円
[COMPANY INFORMATION]
(株)松下美紀照明設計事務所
所在地:福岡市早良区百道浜3-4-7-101
設 立:1989年6月
資本金:1,000万円
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