この地で働く魅力とは 経済活性化に必要なもの
男性が要職につく福岡経済の枠組みでは、これ以上の福岡活性化は不可能ではないか--こうした考えから今回、福岡で活躍する女性経営者による座談会を企画した。今の福岡の魅力と欠けているもの、女性ならではの視点から考える福岡の活性化策について、自身の経営と関連づけて語っていただいた。
<本当の豊かさではない>
―次に、子どもという観点から聞いていきたいと思います。東京よりも福岡の方が子育てする環境としては良いように感じます。
権藤 福岡では出生率が増えています。その背景には、九州内の他県から出てきた若い子たちが「ここで子どもを育てたい」と考えるからでしょう。そういう意味で、出生率は今後も増えていくと思いますが、福岡は保育園が圧倒的に足りないという現状があります。
たとえば、仙台でも認可保育園は足りませんが、認可外保育園に市がきちんと支援しています。同じ市内の子どもを支援していくのは行政として当たり前だ、という雰囲気があるからです。福岡が違うのは、認可保育園に入るには入所基準があって保育料もそれぞれ違いますし、預けたいけど預けられない現状があることです。福岡はもともと子育てしたいという人が集まるわけですから、行政もより手厚い支援をすべきだと思います。
松下 私たちの問題は、優秀な女性経営者で結婚していなかったり、子どもを産めなかったりする人たちがたくさんいることです。子どもを産むと子育てがたいへんになり、極論すれば会社が潰れてしまいます。優秀な人たちの子孫が残らない日本は、これから先どうなってしまうのだろうと危惧しています。
私は、20代で子どもを産んでそこには補助金をたくさん出し、子どもがある程度大きくなったときに女性がしっかりと働けるようなシステムをつくる必要があると思っています。
安東 子育てという点については、海外の子どもたちをホームステイなどで預かってみると日本との違いがよく分かります。あちらは子どもたちのしつけに関して親の意識レベルの違いが歴然としています。
また、日本では短期大学の保育科で資格をとれば、20歳くらいで保母さんになれます。しかし、子どもがいない若い人が、保育園・幼稚園で教えるということ自体に無理があるのです。それよりも、60歳を過ぎていて子どもが孫に当たる世代の人たちなら、愛情をたっぷり注げるでしょう。人間教育ということを考えたとき、今の日本に一番欠けているのはここです。
やはり人生経験の豊かな人が子どもを教育できる体制を、国ができないとしても地方からしていく。そういうことができる女性が、行政のトップに立つことも必要だと思います。
権藤 大きな保育園では、一人ひとりのケアはとてもままなりません。でも、子育ての悩みを先生にも聞いてもらいたい親はたくさんいます。子どもと保護者、両方の気持ちに寄り添った保育園にしていきたいなと思っています。私のところに子どもを預けている方は本当に必死で働いている方が多く、この豊かな日本でそうでない家庭がすごく多いという現実を見ると、決して本当の意味で豊かではないと思います。
日本では、09年10月に厚生労働省が発表した、07年時点における17歳以下の子どもの貧困率が14.2%と、世界のなかでもすごく高く、子どもの7人に1人が貧困層に当たる計算になります。昔は多少の格差があっても同じ地域内で皆が助け合っていましたが、今は目に見えにくい格差が大きくなっています。それが、親の子に対する虐待につながる要因でもあるわけです。なぜこんなに苦しむ子どもたちがいるのかと思うと、胸が苦しくなります。
<参加者 プロフィール>
[COMPANY INFORMATION]
(株)アントレ
所在地:福岡市中央区天神1-4-1 大丸東館エルガーラ4階
設 立:1986年9月
資本金:1,000万円
[COMPANY INFORMATION]
(有)Branches
所在地:福岡市博多区蒲田2-2-23
設 立:2006年3月
資本金:300万円
[COMPANY INFORMATION]
(株)松下美紀照明設計事務所
所在地:福岡市早良区百道浜3-4-7-101
設 立:1989年6月
資本金:1,000万円
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