ネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)
代表取締役副社長 本坊 吉隆 氏
児玉 再生事業の展開はどんどん変化しています。業種によって企業再生ファンドのアプローチも変わってくるでしょうね。
本坊 たとえば地方のデパートや交通機関はどこも疲弊しています。そこに投資するかどうか実際に検討した案件はあったのですが、再生へのシナリオが描きにくい。地方はますます人口が減少傾向にありますので、我々でも何かできるかというと、なかなか難しいのです。
児玉 たしかに地方の流通業は大変です。九州の北九州市小倉に井筒屋という百貨店がありますが、競合店がいなくなってコスト削減に努めていても経営は赤字です。福岡の岩田屋や鹿児島の丸屋など、名門と言われた老舗もそうです。百貨店という業態そのものが地方都市では成り立ちにくい時代になってきました。
本坊 元気がいいのは、郊外へ進出する大型量販店など新興勢力だけでしょう。旅館、ホテルも経営環境は相変わらず厳しいですし、外食産業も価格破壊で収益構造が悪化しています。サービス産業はマーケット自体が右肩下がりになっています。再生には思い切った業態転換やビジネスモデルの変更なども必要ではないかと考えます。
児玉 アパマンの大村社長が言っていましたが、地方ではアパート経営が行き詰っており、家主業が成り立たないそうです。家賃収入が下がるは、空き部屋が増えるはで、無借金ならいざ知らず、どこも経営は厳しい。昔は、家主業は金持ちというイメージがありましたが、今は違うようです。日本全体に暗雲が立ち込めている状況ですが、景気回復の見通しについてはどのようにお考えですか。
本坊 月並みな言い方ですが、中国を中心とするアジアの需要をいかに取り込んでいくかということが大きな課題ではないでしょうか。ただ、日本の産業の担い手となる若い人に元気がないことが懸念されます。ある調査によりますと、学生の人気職種が地方公務員となっていますので、グローバル化にはほど遠いような気がします。若い人の雇用環境を整備することは当然として、もっと海外に目を向けさせるようにしないといけない。それと少子高齢化、人口減少社会は否応なく進んでいきますから、女性やシニア世代が活躍できる社会にしていく必要があります。
児玉 たしかに今の70歳の方は若いですから、年金支給を75歳からにするとか、それまでに働ける環境をつくることは必要かもしれません。
本坊 リストラが一段落ついたさとうベネックでは、稼働率も上がってきました。そこで、昔働いていた技術者を呼び戻すということも企業価値を上げる手立てのひとつとして考えて、今は40代、50代の元社員の方に声をかけているところです。ただ、マクロ的に見れば、日本市場は頭打ちの状況にありますので、技術者を海外に派遣して現地指導を行なうなどグローバル化の工夫が問われています。この流れは、一方で技術の海外流出というリスクもありますので、慎重に考えていかなければなりません。
児玉 長引く雇用環境の悪化で、若い人も熟年層も海外に活路を見いださざるを得ないかのもしれません。海外移転は労働市場だけではないようです。資産家も海外に口座を開いて、資金移動を進めています。
本坊 1,400兆円あると言われる個人金融資産によって、日本は何とか破綻せずにいられます。海外市場でうまく運用している人はまだまだ少ないようですので、輸出産業から見れば1,400兆円のうち5%でも海外移転すれば、円安に振れて助かるかもしれません。韓国も起爆剤となったのはウォン安だったわけですから。
児玉 金融再生ファンドの立場から見て、日本経済活性化のリード役として金融ファンドの果たす役割は。
本坊 単に資金を入れるだけでなく、人も入れてハンズオンで汗もかく。リストラも断行しますが、それによって一定の雇用が守られるわけです。また、ファンドを入れた段階から、我々も事業会社のスタッフと一緒に仕事しているという意識がありますので、金融会社という実感はあまりありません。
【聞き手:弊社代表 児玉 直】
[COMPANY INFORMATION]
ネクスト・キャピタル・パートナーズ(株)
代 表:立石 寿雄
所在地:東京都千代田区麹町3-5-2
設 立:2005年7月
資本金:5,000万円
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