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福岡への提言

糸島の領主から全球化する是松本家、VTCグループを率いて世界に臨む
福岡への提言
2010年11月 1日 17:23

ベンチャー・テクノ・キャピタル株式会社 代表取締役 是松孝典氏

<倒産も辞さない再生支援>
ベンチャー・テクノ・キャピタル株式会社 代表取締役 是松孝典氏 ベンチャー・テクノ・キャピタル株式会社(所在地:東京都中央区)は日本における企業再生の先駆者として、製造業、建設業、ホテル・旅館業、学校法人などに対して、10年以上にわたり中堅・中小企業に包括的な再生支援を行ってきたプロのコンサルティング会社を基盤とする持株会社である。同社の再生コンサルティングは、「誰のための、何のための再生か」を意識するゆえに、再生案として前向きな倒産も選択肢としている。
 創業者で代表取締役の是松孝典氏は、金融機関での為替トレーダー勤務を経て1996年に同社を設立した。当初は、ハイテクベンチャー、とくに情報・通信分野への投資を行う一方で、建設業界向けのシステム・インテグレーションを指導していた。ところが、ファイナンスに関する広範な知識を活かして、中小企業に財務面の支援・助言、対銀行対策、財務関連の諸規定作成、システム立案など幅広いコンサルティングを実施していくなかで、時代の要請により、企業再生支援を手掛けてきた経緯を持つ。
 同社の再生支援は、金融機関など債権者との交渉を請け負うほか、確実性の高い再生スキームの立案・実行、それに伴うスポンサー斡旋や適正人材の派遣にまで及ぶ。専門化集団による包括的なサービスにより、経営者に会社経営に専念できる環境を与え、「肥大化した債務」、「資金繰りの悪化」、「売上の低迷」といった現代病を患う企業に対して個別に再生支援を実施していく。とはいえ産業構造の転換により、どうしても改善が見込めない場合は、昨今の老舗ゼネコンの破たんのように、倒産やむなしとするケースもある。
 
<コンサルから実務路線へ>
 ベンチャー・テクノ・キャピタルの強みは、再生コンサルティング案件のなかで、自身が再生プランに出資できる資金力にある。同社は2000年から、電線、銅線、プリント配線板、工作機械といった技術に裏付けされた資本財メーカーを買収し、設立14年目にして製造業企業を中核としたVTC(ベンチャー・テクノ・キャピタル)グループ17社、従業員12,000人を率いて連結売上高1,200億円規模を誇る。
 同グループを構成する企業はどれもが社歴の長い日本の製造業企業で、戦後日本の高度経済成長から昨今の経済環境まで絶えず変態し続けてきた企業だ。VTCグループは、これら従来からのビジネスを承継し、そこにマーケティングに基づいた経営プランの実践を付与することで、全球化(グローバリゼーション)する経済環境のなかで競争力を持ったビジネスを展開している。また、技術開発にはグループ全体で年間10億円内外を投資しており、ハイブリッドカーエンジンの装置部品で世界シェア9割を占めるなど、グローバル市場を見据えた企業戦略で国内外にその存在感を示している。環境多様性に対応して残すべきを残し、変えるべきを変えるという単純明快なアプローチをなくしては、淘汰の波を乗り越えることはできない。
 是松氏はこれまで再生コンサルタントとして老舗企業の倒産劇に関わってきた。「コンサルという言葉は、何か押しかけ強盗みたいな響きがある」という同氏は、自身の役割を「プロセスリーダー」と位置づける。再生コンサルにせよ製造業企業の経営にせよ、いずれも明確なプロセスを描き、実行することで目標を達成していくことに違いはない。しかし、激変する経済環境にあって、それまで地域を担ってきた地方貴族が没落していく様をみて何を思ったのか。そして、自身の責任でグループ経営を牽引していく是松氏には、経済合理性以外の何か大きな覚悟を感じる。

<糸島の領主から生生流転>
 是松家は「生まれるときと死ぬときは福岡」という家訓を持つ家柄である。これは短期間で有力企業グループを形成した是松氏の資金力を示唆している。通常であれば、たとえコンサル事業が好調でも設立10年程度で、中堅企業をグループ化するだけの資金力を持つには至らない。しかし、是松氏個人の資金力を背景にすれば、VTCグループが短期間で一大企業グループを形成したことにも納得がいく。
 是松家はもともと、江戸時代は糸島半島の一部を治めていた領主で、3代将軍徳川家光公の時代に黒田藩の御家騒動(黒田騒動)を機に幕府から黒田家に附属された御附家老(おつけがろう)であった。是松本家は江戸時代を通して前原から美咲が丘あたりの領主としてその地を治め、明治に入ってから東京に移住している。しかし、現在でも邸宅と墓は前原に残されており、是松孝典氏自身も生い立ちこそ東京だが、出生地は福岡である。
先々代の是松清助氏の名前が刻まれている芳名石 JR筑肥線・加布里駅近く(福岡県糸島市)にある伊都国宮地嶽神社(みやじだけじんじゃ)の境内に置かれる明治中頃の改築記念の芳名石には、是松氏の祖父にあたる是松清助氏の名前が世話人として刻まれている。この人こそ、のちに福岡西部地区で勃興した是松興産の創業者であり、是松本家の先々代当主にあたる。清助氏は是松興産を創業したのち、明治28年に東京へ移り住んだが、同社は清助氏の弟が福岡に残り引き継いでいる。
 是松興産については地域の建築・土木業に従事する傍ら、1912年から採掘が始まった姪浜炭鉱の坑道を支える材木の調達で隆盛を誇った。太平洋戦争後には改組して住宅などの不動産開発を精力的に手がけていたが、バブル経済の崩壊に揺れる平成9年に破産宣告を受けて、その企業生命を終えている。
 その一方で、東京に移った是松本家は独自の道を歩んでいく。東京で生活を始めた清助氏は当時の内務省に勤め、その長男・良春氏は、機械商社の社長として社業拡大に注力したと聞かれる。そして、その良春氏の功績をよそに、長男である是松孝典氏は金融機関勤務を経て、1996年にベンチャー・テクノ・キャピタルを設立、現在に至った。この是松本家の軌跡は、もともと糸島の不動産だった是松家の資産が、代々承継されるなかで形を変えて、年商1,200億円規模の企業グループに変遷したという側面を持つ。

<原理原則に基づいた判断>
 祖父の代で東京に移り住んでから115年という月日を経て、是松氏はその承継資産を日本の有力製造業企業グループに仕立てあげた。かつて福岡で創業された是松興産は一時代を謳歌し、最終的には変化の波に呑み込まれて倒産した。このことは、形あるものはいずれ滅びる運命である一方、形を変えながらも受け継がれていくものが存在することを教えてくれる。だとすれば、福岡に残った是松分家と東京に移った是松本家の違いは何だったのか、VTCグループ形成の背景には承継する者が学ぶべき教訓が隠されている。
 「原理原則に基づく」ことを信条とする是松氏は、「先代の人脈は承継できても1割程度」と承継者が直面する現実をシビアに語る。ゆえにVTCグループでも是松氏が血縁を後継者に据えるようなことはせず、「是松本家は一世代一事業」の考えを守っている。倒産した是松興産が福岡の地で一族経営を維持してきたのとは対照的だ。これが、変化に対応して発展を維持するためには、血縁による経営支配よりも原理原則に基づいた判断能力を重要視する是松本家の考え方である。
 また、昨今の建設業界を「魚がいないところで魚釣りをしている」と揶揄する是松氏は、業界のあり方としてマーケティング志向とシンクタンク化なくしては、多くが淘汰されるだろうと指摘している。つまり、世界市場にせよ国内市場にせよ、今後は需要動向を見据えた上で、専門的に差別化されたサービスが不可欠であるということだ。恐らくこれは、国内経済が収縮するなかで、世界に通用する日本の製造業に着目してVTCグループを形成したことと同じ発想で、これこそ1つの形に固執しない是松本家の真髄といえる。
 是松孝典氏の描くVTCグループの次世代戦略はいまなお止まらない。これまで国内の製造業企業の買収でグループ基盤を築いてきたが、今後はM&Aを視野にいれた海外展開にシフトしていく構えだ。グループ企業の多くはアジアに拠点を置く製造業企業だが、時代の過渡期において是松氏自身の経営ビジョンはさらにその先を見据えている。現状に甘んじることなく自ら変化していくその姿勢には、方向感を失った既存企業には大いに学ぶべきものがある。
 ただ、その一方で、激変の時代においても「生まれるときと死ぬときは福岡」と変わらない精神を守り続ける是松本家。変化に対応できなければ淘汰されるだけ、そんな普遍的なルールのなかでも、変わらないものはある。是松氏率いるVTCグループは全球化する世界経済のなかで、次なる変態にむけて邁進している。

【児玉 崇】

<プロフィール>
是松 孝典(これまつ たかのり)氏是松 孝典(これまつ たかのり)氏
1957年、福岡県生まれ。1982年ミネソタ州立大学大学院卒業、米国シティバンク入行。その後、安田信託銀行、クレディスイス銀行、ナショナルミンスター銀行で為替ディーラーとして勤務。1996年、ベンチャー・テクノ・キャピタル株式会社設立、現在に至る。


<会社概要>
ベンチャー・テクノ・キャピタル株式会社
代表者:是松 孝典
所在地:東京都中央区京橋2-11-6 京橋彌生ビル2F
TEL:03-5524-0888
URL:http://www.vtc-hd.co.jp/


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