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「情報・環境・モノづくり」分野で九州№1の教育拠点実現を目指す~福岡工業大学(下)
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2010年11月 3日 08:00

<卒業後も徹底した就職支援>

 「企業が大学新卒者を選考する」時代になったなかで、どうしても大学側の支援が"内定をもらう"という結果に繋がっていく。内定をもらえるかもらえないか決まることに、サポートの質の価値が置かれていると言っても過言ではないだろう。
 このような大学側の支援が就職にモノをいう時代に、同大学は「進路指導教諭が生徒に進めるイチ押し大学」(大学通信社調べ)の上位にランキングされた。これは、全国約2,000の進学校の進路指導教諭にアンケートを実施し、各項目別に全国の国公私立大学にランキング付けしたものである。"就職に力を入れている大学"23位、"面倒見が良い大学"18位、"学生支援力が高い大学"23位にランクインしており、九州のなかだけではなく全国の大学のなかでも上位にランキングされた。
新学長の下村輝夫氏 同大学がこのような高い評価を受けたのは、リーマン・ショック以降の就職氷河期へ突入する前に、いち早く対応することができたからである。なぜなら、『For all the students(すべての学生生徒のために)』という同大学の経営理念をもとに、すべての事業について「学生のためか?」という判断基準を明確にしているためだ。さらに、大学を経営する上層部の人間が民間企業の出身者であることでマーケティング機能がしっかりしている。他の大学にはない大きな特徴である。
 学校事業についてB/C(費用便益分析)、PDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Action:改善)による管理を行なっているため、スパイラル事業を展開しながら効率的に成果を上げるというのも、他の大学より優れている点と言える。

<就職支援の実態 90%以上の内定率に>

 就職支援は、全学年に対する正規カリキュラムと課外における就職教育(在学時支援)、卒業後1年間の卒業生に対する支援(卒業支援)で構成されている。
 まず1年次からライフデザインシートを作成させ、社会性や「知・徳・体」という人間力を形成する。あいさつやマナーの大切さを教える講演を著名な講師を招いて実施するほか、「フレッシュマンスクール」で基礎学力やコミュニケーション能力の向上を図り、大学教育に必要な基礎を養う。大学入学時の生徒のなかには、一般入試のほかに推薦入学してきた生徒もいるため、学生間の学力格差をなくし、落ちこぼれを防ぐ取り組みである。さらに、キャリアプランニング講座、個人面談による就職意識調査、就職オリエンテーションなどを実施し、大学生活における"目的意識"を醸成する。
 2年次には、進路設計を進めていく。大学OBや企業人によるガイダンスや業界意識調査で目標設定を行なう。また、カリキュラムとしてインターシップ(就業実習)も実施する。そして3、4年次では、本格的な就職活動を支援する。学内合同企業セミナーや保護者ガイダンス、履歴書添削指導や模擬面接指導、SPI対策講座や年10回の筆記試験対策といった全面的なバックアップが行なわれる。
 さらには、交通費支援制度を設けている。これは、関東・東海・関西など遠方の就職活動費として、ひとり2回までの往復交通費を支援する制度である。09年度では540名の学生がこの制度を利用し、遠方の企業を第1希望としている生徒に好評だったようだ。
 以上が、キャリアプランニング支援事業の概要である。また同大学では「就職学び直しプラスワンプロジェクト」として、卒業時に就職できなかった学生や内定取消の学生への支援にも取り組んでいる。これは、4年間の就職支援の延長として、1年間継続的に支援する制度である。
 卒業後1年間は、学内合同企業面談会や学内就職ガイダンスといった学内就職行事に参加することが可能。また同制度では、臨床心理士の資格を持つキャリアカウンセラーを配置し、キャリアプランの再構築を図っている。資格取得やビジネスマナーの向上などのスキルアップを図り、モチベーションを高めるためだ。さらに、大学OBや保護者などのネットワークを強化し、求人あっせんも行なっている。
 この支援の成果として、10年3月末までで大学では91.3%、短期大学部では90.7%、大学院では97.7%の内定率に繋がった。

<大学院と短期大学部 それぞれの取り組み>

 同大学院生は、在学中に平均2回の学会発表を行なうなど活発な研究活動をし、近年は国際学会に出席する学生が増加している。また、環境・エネルギー問題に取り組む学術連携「コンソーシアム・福岡」を、福岡工業大学、九州大学、福岡女子大学および西南学院大学の4大学で形成している。
 これは、文部科学省の大学教育改革支援の1つである「戦略的大学連携支援事業」に採択されたものであり、福岡工業大学が代表校を務めている。アジアにおける環境・エネルギー問題の解決と地域経済の振興において、リーダー的役割を果たすことのできる人材の育成、および共同研究を推進し地域への還元を図る「知の拠点」を福岡・博多につくることを目的としており、そのために教育連携、研究連携、地域貢献、資源共有といった4つの事業に取り組んでいる。
 短期大学部では、学生個々の特性を把握する体制を強化している。体制強化として、2年間の短い修学期間に、確実に実力を高めるために学生の「出席管理・個別面談システム」を導入。また、学生が教職員に悩みや疑問を相談できるように「フィットルーム」も開設している。また、少子化のなかで全国の短期大学の約60%が定員を確保できないなか、定員の1.26倍の入学者を受け入れることができた。この数字は、同大学への評価の表れであろう。また、保護者や学生にとって進路が決定することの重要性を再認識し、進路支援の取り組みを再構築するなど、進路保証プログラムを構築している。
 時代に即し、しっかりと学生目線の教育改革を行ない、さらにそれが評価されている福岡工業大学。昨今の厳しい社会状況のなかであっても、同大学は学生一人ひとりの目標が明確に見えてくるのではないだろうか。

(つづく)

【長嶋 絵美】

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