<経営理念に息吹を吹き込め 1>
「こういう人生を実現する」、「この仕事を最高に成し遂げる」―このような経営者の人生観、事業観、使命感を表したものが企業理念である。人間であれば、その人の思想、人生観に当たるだろう。人間は志一つで輝かしく、価値高く生きられる。会社も同じで、高い志のある経営者は「我が会社を」と胸の張れる経営を目指しているものである。
今日ある大企業も、最初は一人の(あるいは一握りの)創業者の意思によって始まった。その創業時の熱い思いは、お客さまに認めてもらえる商品やサービスを作り上げ、お客さまに喜んでもらいたいという一念に染め上げられていたと思う。「お客さまのため」、「世のため」という一念が、やがてお客の信頼を得て、社会の認知を得て、今日の成長を築いてきた。つまり、この創業者の高い人格、その熱い社会的使命を明文化したのが「経営理念」である。
積水ハウスは創業30年を機に、それまで温めておいた企業理念を制定した。
実質上の創業者・長田鍋氏は、創業時に親会社から厄介者の積水ハウスを任された。そのようないきさつから、ボロ舟に乗った運命共同体として全員参加の経営を目指した。「全社員一人一人が社長になったつもりで働いてほしい。業務上組織の役職はあっても、上下はない。労使の関係ではなく、労労だ」と説いた。
30周年を迎えるにあたって、積水ハウスは田鍋氏の信念であった「人間愛」を基本理念に据えたのであった。会社が大きくなり社会環境も変化するなかで、あるべき姿を追求する精神や行動に緩みがないか、お客さまに顧客本位で接しているか、常に最高の品質を目指すという誇りを持っているか、傘下の協力工事店を含めた人間関係において、立場や面子を重視したり、ことなかれ主義、サラリーマン的発想に陥っていないか、常に「人間愛」の心で自戒すべきであると説いている。会社は人、経営は人である。社員一人一人の心が事業の根幹をなすものであり、これこそが社会に貢献する根源である、と。
50周年を迎えた今、企業理念「人間愛」を、積水ハウスの目指す経営哲学の意味を再認識すべき時ではないだろうか。
【野口 孫子】
※これは積水ハウスにエールを送るものであり、誹謗中傷するものではありません。
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら