(財)日本健康・栄養食品協会 会長 山東 昭子 氏
日本抗加齢医学会 理事長 吉川 敏一 氏
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界をリードする(財)日本健康・栄養食品協会(東京都新宿区)の会長を長年務めてきた。また、「元気な120才を創る会」の理事として精力的な活動を行なっている。一方の吉川敏一教授は、一般社団法人日本抗加齢医学会(東京都港区)の理事長の任にある。健康・長寿社会の実現のために尽力する2人に、ハッピーエイジングな日本を創り上げる特効薬は何かを聞いた。
<予防としての健康食品>
吉川 そういう意味では、予防医学というのは大事です。医療の場では、医者の私たちが責任を持って治療しなければなりませんし、患者さんに知識がなくても、病気になられたら医者の私たちに任せていただければそれで結構です。しかし、こと予防に関しては、自己責任でやっていただかないとなかなかうまくいきません。
そこで、どういうふうにすれば予防できるかということですが、人それぞれ趣味も違えば食生活や生活環境も違います。したがって、自分で勉強するなり自分で努力していただかないと、予防医学というのはなかなか発達しません。
メタボリック症候群の人でも、メタボ対策で会社がやりなさいといってもなかなかやろうとしない。私がこうしてくださいと伝えても、なかなかその通りにやって下さらないというのは、自分で自分の体が病気にならないように防衛しなければならないという感覚が薄れているからだと思うのです。
皆さん、病院や会社や国がやってくれるという感覚のようです。もう少し自己責任というものを考えて下されば、何が良くて悪いのか、こちらの話にも耳を貸していただければ、もっと予防もやりやすくなるのですが。
山東 食生活や健康食品など、ご自分で何が良いのかいろいろと考えておられる方もいらっしゃるようですが、価格が安いからとか安易に考え過ぎて、外国から取り寄せて失敗されていらっしゃる方も多いようですね。自分で考えていくというのはなかなか難しい面もあるのでしょう。
吉川 各人ともに、知識はそれほどあるわけではないでしょうから、そこは私たち専門家がきちっと検証しているようなものを調べていただかなければいけないと思います。
どうも世の中の風潮に惑わされる人が多く、もう少し勉強してもらわなければなりません。勉強する人たちに正確な情報を提供するということに関しては、私たちに責任があると思います。
山東 TVコマーシャルなどの盛んな商品が目に入ってきがちなのでしょうけれど、ほかにも良い商品はたくさんあります。そういう意味で、薬剤師の方々にもさらに柔軟性を持っていただき、西洋医学だけではなく、東洋的ないろいろなものを幅広く考えて患者の方や一般の人たちに対して伝えていくことができれば、利用者はこれまで以上に安心できるのではないでしょうか。
吉川 「元気な120才を創る会」で実践しているように、サプリメントや薬だけに頼るのではなく、トータルに考えていく必要があるでしょう。料理もそうでしょうし、栄養学も大切です。どういう環境で生活するかということなど、人の健康にはすべてが影響していると思います。
日本人は一定の方向だけに行きがちですが、健康に大事なものとして、栄養と運動と休養の3つの要素があるのですから、1つのものだけを摂ればそれで済むということはないのです。また、自分に合ったテーラーメイドの予防法というのがそれぞれにあると思いますので、それを会得してもらわなければならないと思います。
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吉川 統合医療というのは西洋医学だけではなく、いろんな医学を合わせるというものですが、そのなかには訳のわからないものもあれば、非常に科学的に極められているものなど全部を含んでいます。だから科学者としては、エビデンスがきちんとしたものでないと勧められないという前提があります。
ある程度解明されている統合医療と言われているものには、漢方薬などがあります。つい最近、ようやくPETで脳の働きに関することなどを測定できるようになってきまして、私たち人間が感情などいろいろなものに左右されているという事実がわかってきました。
まだ証明されていない部分はけっこうありますが、それらが科学的に証明されていないからダメだという姿勢はとるべきではないと思います。証明されていないけれども、まだ認められていないので勧められませんというぐらいであればいいのですが、認められていないものはダメだというのは私は反対です。
科学の世界では、これまでに認められていたけれども実際はダメだったということも一方にはありますから、今正しいと思っていても将来的に証明されていない方に移ることがあるかもしれません。たとえば、コレステロールひとつにしても、どこで線を引くかというのは学会(栄養資質学会と動脈硬化学会)でも議論の的になっているほどです。
山東 善玉コレステロールか悪玉コレステロールかというのも、私たちにはわけがわからなくなってしまいました(笑)。
吉川 そうですね。科学的に究明されていないもののなかにも真理があります。ただ行き過ぎて、科学的に証明されていないものを信用し過ぎてしまい、良いものだと思いこんで正しい方法を怠って、まだ証明されていないものばかりをやると健康被害に合ってしまうということになります。
私自身は、摂取者がよく勉強して取り入れられたら、つまり疑わしいなと考えながら取り入れられればいいと考えています。正しいと思って取り入れることは良くありません。たとえば、温泉に入るとその効果にすごく気持ちいいと思う人はいます。ただ、温泉に入ることでどれくらい免疫度が上がるのかというと、人それぞれ違っており測定するのは難しいです。温泉にもいろいろな種類があります。そのなかの1つの温泉に入って気持ちいいという人はいるでしょうが、全部がそうとも限りません。
すべてを統合したようなものというのは、ある人にいい場合はその人に原因があると私は思っています。西洋医学はほとんどの人に一定の影響がなければ認めないという統計学上の定義がありますから、100人のうちの1人に劇的な効果があっても、それは効果があるとは言わないのです。でもその人にとっては、ものすごい効果があるということはあるわけです。
【田代 宏】
山東 昭子(さんとう あきこ)
(財)日本健康・栄養食品協会会長。参議院副議長。
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌などで活躍。1974年、参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。自民党では女性局長、環境部会長をはじめ、教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。90年、我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務めた。現在、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現を目指している。
吉川 敏一(よしかわ としかず)
日本抗加齢医学会理事長。京都府立医科大学教授。医学博士。
1973年京都府立医科大学卒業後、84年米国ルイジアナ州立大学客員教授、93年東京大学先端科学技術研究センター客員教授などを歴任。05年1月から06年12月まで国際フリーラジカル学会の会長も務めた。昨年は民放テレビの「世界一受けたい授業」に出演。講演活動、執筆活動を精力的にこなす日々を送っている。「活性酸素・フリーラジカルのすべて」(丸善)、「いくつになっても年をとらない9つの習慣」(扶桑社)など著書多数。
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