(財)日本健康・栄養食品協会 会長 山東 昭子 氏
日本抗加齢医学会 理事長 吉川 敏一 氏
参議院副議長の山東昭子氏は、健康食品業界をリードする(財)日本健康・栄養食品協会(東京都新宿区)の会長を長年務めてきた。また、「元気な120才を創る会」の理事として精力的な活動を行なっている。一方の吉川敏一教授は、一般社団法人日本抗加齢医学会(東京都港区)の理事長の任にある。健康・長寿社会の実現のために尽力する2人に、ハッピーエイジングな日本を創り上げる特効薬は何かを聞いた。
<健食で免疫力アップ>
吉川 皮肉な話ですが、在院日数が長ければ医療費がだんだん落ちてくるというシステムを国が導入してくれたおかげで、病院はいかに短い期間に患者さんを退院させるかということを熱心に考え始め、その工夫を始めました。
そうなると、たとえばですが、今までは切ってほったらかしておいたものが、切った後いかに傷を早く治すか、できれば切る前に免疫度を上げておいて、感染症などが起きないようにしておけばいかに早く治るかなどを考えるようになりました。
たとえば、入院前に乳酸菌のプロバイオティクスなどを飲んで患者さんに抵抗力をつけておいてもらえば、入院期間が短くなります。そのとき、薬は使えないわけですから、食べる食品もいいけれども健康食品などはもっと強力ですよね。
今、病院に居る人は、栄養士が回ってきて食事にはどのようなものを入れなければならないかということを言いますから、若い医者には広い視野を持った医者が増え始めています。今後は、若い医者には健康食品はダメだという頑固な人は出てこないと思います。
山東 政治家にも統合医療などに理解を示す人たちが増えてきましたが、まだほかの政策に関心を持った人たちが多いようです。でも医療費のことを考えると、本当に健康というものを考える政治家が知識を吸収しながらいろいろな人たちに伝えていくことが必要でしょうね。
吉川 アメリカでは政治家がよく勉強しており、こういうことをやろうというので主導する場合が多いようです。日本でも、信頼できる専門の研究者に任せていただき、きちんとしたものをつくりなさいとおっしゃっていただければ、私たちはやりがいがあります。政治家の先生方にはそういうところでゴーサインを出していただければと思います。
山東 そうですね。
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吉川 最近、機能性のある農作物を作ることができるようになってきました。有用な食品因子の入った農作物をたくさんつくって、私たちが食べる。サプリメントのように、高濃度の有用成分が入っているものもいいですが、そういうものが含まれている農作物も良いです。機能性食品、健康食品という定義の幅をもう少し広く考えて、農作物も含んだ食品と考えれば、その範疇には料理も入ってきます。
加齢黄斑変性という目の病気があります。網膜にある黄斑が変質して失明に至るというものです。失明率第1位の全米では大規模な調査を行なっていますが、これにはルテインという予防成分が有効です。サプリメントなどは、眼科医も年をとると盛んに飲んでいますが、ルテインは腸から吸収されて、なぜかそれが目に効果をもたらすのです。これは黄色い色素なので、卵黄やホウレンソウなどにも含まれています。
研究していますと、ある種の芋の葉に多いということがわかりました。芋の実や蔓は、日本でも昔は食べていましたが、葉はどうも苦味があるそうで食べにくいらしいのです。これをなんとか料理専門家においしく食べられる工夫をしていただくと、今では廃棄している葉を健康のために食べられるようになると思います。
そうすれば、食品から抽出したものがサプリメントになり、疾病の予防になって、それを医者が投与するということになることで、サプリメントも農作物も同じ範疇になってくるわけです。農家でそういうものをたくさん作ってもらって、栄養士さんにはおいしく食べられるようにしてもらう。私たちがそれを治験するとなると、農家もきっと豊かになると思うのですが(笑)。
山東 付加価値がついていいですよね。
吉川 ほかでは温州ミカンの黄色い色素、いわゆるカロテノイドですが、それを農家の人たちは12月から3カ月くらいかけて6個とか10個食べるといいます。そうすると、効果が1年間くらい保たれて、糖尿病や肝臓にいいらしいです。
現在、その治験をある大学でやっていますが、ミカンは甘いので糖尿病の患者は食べるなという医者もいますが、実は糖尿病にもいいらしいというのがわかってきたのです。
この治験が発表されたら、多分ミカン農家は潤うと思います。今はそれが斜面で栽培されているうえに安価なため、お年寄りの多い農家では体力的な問題もあってわざわざ斜面を登ることもせず、放置されたままやがて実が地に落ちて腐っているらしいのです。しかし、価値が上がってどんどん出荷が増えれば、若者が帰農して活性化も図れると思います。
これは日本の特産なので、治験が発表される前に温州ミカンを保護する必要もあるのではないかとさえ考えています。さらに温州ミカンの付加価値を高めるプロジェクトもいろいろ立ち上げればいいと思います。
<政治主導の勉強会を>
吉川 ほかにも、血液サラサラ作用のあるケルセチンを含む玉ネギなどの研究にも携わっております。このような良い成分を含んでいる農作物をいかにして作るかというプロジェクトを、ぜひ政治主導で行なっていただきたいですね。
ルテインに話を戻せば、たくさんルテインを食べればいいのですが、サプリメントの方が手っ取り早いと思えば、芋の葉と一緒にサプリメントを飲んでおけば3日か4日は芋の葉を食べなくてもいいということになります。すると、医者のサプリメントアレルギーもなくなってくると思います。
近いうちに、ルテインというものが黄斑変性を予防できるというのがピシっとしたダブルブラインドのトライアルで証明されているということになれば、これはもう食品です。ほうれん草が嫌いな人はサプリメントを飲み、病気になれば眼科医に行けばいい。ルテインというのは食品ですが、やがて医者が食品を処方するという時代がやってくることになります。
そうなると、医者が健康食品にアレルギーを示すようなことはなくなってくると思いますが、いかがでしょうか。少なくとも、眼科で黄斑変性を専門にやっておられるような医者はルテインを飲んでいらっしゃると思いますよ。
山東 ぜひ、そのための研究会をつくって一緒に考えていきたいですね。皆さんが発想の転換をして、食とサプリメントと健康づくりを幅広く考えていくことが必要でしょう。若々しい人と国をつくって行くために頑張りましょう。
【田代 宏】
山東 昭子(さんとう あきこ)
(財)日本健康・栄養食品協会会長。参議院副議長。
11歳で芸能界入り、女優・司会・レポーターとしてテレビ、映画、雑誌などで活躍。1974年、参議院全国区に32歳の最年少で初当選。以後、6回当選、参議院で環境委員長、外務委員長を歴任。自民党では女性局長、環境部会長をはじめ、教育・福祉・住宅対策・外交関係を担当。90年、我が国6人目の女性大臣として科学技術庁長官に就任。自民党両院議員総会長、食育調査会長などを務めた。現在、「元気な120才を創る会」の理事として健康長寿社会の実現を目指している。
吉川 敏一(よしかわ としかず)
日本抗加齢医学会理事長。京都府立医科大学教授。医学博士。
1973年京都府立医科大学卒業後、84年米国ルイジアナ州立大学客員教授、93年東京大学先端科学技術研究センター客員教授などを歴任。05年1月から06年12月まで国際フリーラジカル学会の会長も務めた。昨年は民放テレビの「世界一受けたい授業」に出演。講演活動、執筆活動を精力的にこなす日々を送っている。「活性酸素・フリーラジカルのすべて」(丸善)、「いくつになっても年をとらない9つの習慣」(扶桑社)など著書多数。
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