＜民主党と運命を共にした吉田さん＞

　とみ子氏の戦線逃亡によって吉田氏は｢吉田×広太郎激突の再来｣の序盤戦を制圧した。今回の福岡市長選はとみ子氏陣営を粉砕したからといって勝利の展望が見えるわけではない。まだ高島・木下という強力なライバルが控えている。もともと吉田氏は民主党を舐めきっていた。｢できるならば財界の支援、保守・自民党とのバックアップを｣が本心であった。だが、とみ子氏が自民党推薦を画策したことと、木下氏が民主党推薦の動きを先行したことで思惑が外れた。また吉田氏の強力な助っ人の後押しがあり、民主党推薦をとりつけた。
　吉田氏の恩人は民主党福岡県連副代表である江藤市会議員である。吉田氏の民主党推薦確保は江藤氏にとって政治生命がかかっているから必死であった。見事な政治手法を駆使して吉田氏をサポートした。江藤氏にしてみれば、吉田市長再選を果たせば民主党市議団は少数派ながら与党の立場をキープできる。このポジションが江藤氏の政治権力の源になる。民主党福岡市議員団を束ねるパワーを保つことができるのである。

＜勝ったら福岡市衰退、負けたらお先真っ暗＞

　｢前回の選挙では吉田氏は清々しかった｣と元の応援者は懐かしがる。｢明日朝8時にＡさんを紹介しよう。都合はどうだ｣と元応援者がＴＥＬする。吉田氏は｢8時は予約が入っています。7時でも構いませんよ｣と返事する。｢こいつは腰が軽い。さらに紹介しなければなるまい｣となった。4年経過して1期市長のポストに就くと、もう殿様だ。この元応援者は今度の選挙においては誘われても動かない。こういう姿勢を貫く人たちは多数いる。

　さて、吉田氏が再選したら本人の鼻息は荒くなる。｢飲み友達｣側近政治が行なわれるであろう。江藤氏の政治権勢は燦々と光り輝くことは間違いない。民主党市議団は鉄の結束力を誇るようになるだろう。ところが、吉田氏が再選を果たした際には｢マイナスのケース｣も想定される。福岡市職員の風紀の乱れが確実に進行する。｢吉田市長は組み易し｣と舐められている。無策の結果、福岡都市力は弛緩していくであろう。

　高島氏に敗北したらどうなるのか。吉田氏のマスコミ復帰の可能性は皆無であろう。せいぜい、どこかの企業の顧問格のポストはあるからそこで食い扶持を得て再生のチャンスを待つしかない。こういう不安定な状況が待ち構えているからこそ、吉田氏は血眼になって選挙戦に挑む必要があるのだ。ただし、｢『失敗だった。民主党の推薦を得たのは』と吉田氏が後悔の念を抱いている｣と指摘する精通者もいる。
　吉田氏よりも大変なのは民主党福岡県連副代表の江藤氏だ。吉田市政再選がストップされれば少数野党に転落する。そうなると民主党福岡市議員団の不満と矛盾が一挙に露呈するようになる。若手の有能な議員達も、公然と党内改革を叫びだすようになる。江藤氏にとってこのような事態は避けたいところだ。しかし、時の流れには逆らえない。民主党市議団の活性化を実現できる機は熟するようになるだろう。

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