<経営者は徳で治めよ 2>
時代の変革が激しい。数年前まで飛ぶ鳥を落とすがごとき勢いのあった企業が時代の変革についていけず、衰退してしまうことはよくある話だ。
よく、新しい経営者が着任すると、「ずぶずぶのタオルだから、まだまだ絞れる。乾いたタオルをさらに絞る」と豪語する人がいる。前任の経営者がぬるま湯だったかのようにも聞こえる。自分が全能者のごとく振る舞うのは、経営者の品位、人格を問われかねない。経費の削減、人件費の削減などと称して、本来ならまず役員が率先して報酬カットをせねばならないところを、社員の給与カットに着手して一時的に利益が増えたとして、我が手柄と自慢するのも一瞬に過ぎない。理由なき、言われなき給料カットは社員の士気を一気に落ちこませ、やがて業績の低下につながるのである。荒んだ社風になれば衰退の一途となるだろう。
会社には永続性が求められる。企業が今後さらに100周年へと継続するためにはCSRと言われるように、企業には社会的責任がある。雇用の確保、納税の義務、社会に対する寄付活動など、その責任を遂行するため、利益が必要なのである。しかし、安易に弱い立場の人からコスト削減は慎むべきだろう。
「乾いたタオルをさらに絞る」―この言葉はトヨタにおけるコスト削減の代名詞のようになっているが、実は本当の意味は次のようなものである。「乾ききったタオルをすりきれるまで絞るということではなく、乾いたタオルを放っておくと、湿気(無駄)を含んでくる。それを絞る」ということだとトヨタは言っている。無駄とは何か。それは付加価値を生まない動きやモノをさす。工場や研究所など、利益を直接生みだし、付加価値を生じるところには資金を投入し、そうでないところには金はかけない。トヨタ本社はすこぶる質素なたたずまいで、これがトヨタ本社かと思われるくらいだ。本社は利益を直接生みださないからだ。トヨタ銀行と言われるくらい金融資産2兆円を有する企業の基本的考え方だ。経費節減への視点が違うことをよく認識すべきと思う。
【野口 孫子】
※これは積水ハウスにエールを送るものであり、誹謗中傷するものではありません。
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