NPO法人 鴻臚館・福岡城跡歴史 観光・市民の会 理事長 石井 幸孝 氏
<福岡のオリジンを示す福岡城>
元JR九州社長で「NPO法人鴻臚館・福岡城跡歴史・観光・市民の会」理事長の石井幸孝氏は、福岡市中央区舞鶴一帯に残る福岡城址を整備し、幻の天守閣を再現しようという活動をしている。福岡という都市のルーツを内外に明確に示すことで、観光や教育などあらゆる面で福岡市民の誇れる場にしようというのだ。
2011年春に九州新幹線が博多駅まで全線開通します。これは博多が終着駅ではなくなるということで、博多が素通りされてしまう可能性があることを意味します。終着駅としてのメリットがなくなるということは、観光都市としては大きな損失です。今後、多くの人が福岡に足を運ぶか、どうかは都市の「文化力」が問われるといえます。その意味で、福岡城天守閣の復元整備は大きな意味があるのです。
福岡城を造った黒田如水は知略策略の武将として知られていますが、城造りでもそのすごさを発揮しました。朝鮮半島の敵も想定した、戦略性の高い巨大な城を造ったのです。城域の広さや石垣の組み方は日本有数で、さらに城下町が広いのも特徴でした。お城を中心にして東は博多部の商人の町から西は室見川まで、鶴が翼を広げたような城造り、まちづくりをしたのです。福岡という地名もこのときにできました。
つまり、アジアに開かれた国際交流都市としての福岡の都市の基本は、黒田如水・長政の親子によってこのときに形成されたものであり、福岡城はまさに福岡のオリジンともいえるものなのです。福岡城址を整備するということは、単にお城を復元するということではなく、福岡の都市としてのオリジンを明確に示すということなのです。
今の福岡は、新しい都市としての魅力はさまざまありますが、福岡固有の歴史・文化に基づいて市民が誇れる大きな象徴的な場がありません。国内外から訪れる多くの人に、誇りを持って案内できる場所がないのです。また、次世代に語り継ぐ場所がないとも言えます。
<福岡は本当に住みやすい都市なのか?>
私たちNPO法人鴻臚館・福岡城跡歴史・観光・市民の会は、福岡城址や鴻臚館という、いわば私たちの財産を整備して役立てようというのが目的ですが、やはり天守閣を復元することを大きなスローガンとして掲げて、活動を重ねてきました。天守閣の復元だけではなく、本丸全体の整備を考えており、まずは塀や門、櫓などから着手して、ひとつひとつ成果が見えるようにしていきたいのです。そのためにはまずは10億円程度の基金からスタートして、順次増やしながら天守閣の復元につなげ、ゆくゆくは学んだり遊んだりできる場をたくさん整備して福岡城域全体をセントラルパークのような場所にしたり、お城で泊まれるような施設を建造したりすると面白いかもしれません。
福岡は多機能、多彩な都市だけれども、それぞれの魅力がいまひとつ一体感に欠けていると感じます。福岡は住みやすい都市だといわれてきましたが、本当に住みやすいのか、きちんと検証する必要があるでしょう。都市交通の結節の悪さ、観光都市としての意識の低さなど、課題はさまざまあります。黙っていても人が集まる時代ではこれからなくなります。市民も一体となって都市の力を高めていく積極的な努力が必要となるでしょう。
<プロフィール>
石井 幸孝 (いしい よしたか)
1932年10月12日生まれ、広島県出身。元九州旅客鉄道(JR九州)社長および会長を歴任。
<会社概要>
NPO法人 鴻臚館・福岡城跡歴史 観光・市民の会
代表者:石井 幸孝
所在地:福岡市中央区赤坂1-12-15
設 立:2003年4月
TEL:092-716-8238
URL:http://fukuokajokorokan.info/
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら